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「イカゲーム」大ヒットの裏にあるもの

写真はイメージ

 韓国の名節といえば、秋夕(旧盆)と旧正月だ。今年のコロナ禍の中での韓国の秋夕で、大ヒットを飛ばしたドラマが、ネットフリックスのオリジナル連続ドラマ「イカゲーム」だった。9月17日に世界で一斉に公開。コンテンツの順位集計サイトによると、「イカゲーム」は10月2日現在、ネットフリックスが配信している全世界83カ国のすべての国でテレビ番組部門1位という記録的なヒット作となっている。

 「イカゲーム」は巨額の負債などを抱えた456人が無人島に集められ、賞金456億ウォン(約42億円)の賞金の賭かったサバイバルゲームをするというものだ。サバイバルゲームには韓国に昔からある子どもの遊びが使われる。集まったのは会社を解雇され、チキン店をやるが失敗して競馬などでさらに借金を作った者や、ソウル大学を出て投資会社に勤めるが投資に失敗して莫大(ばくだい)な借金を抱えた者、脱北ブローカーに詐欺になった者など、社会の落後者たちだ。

 1話ごとに遊びを通じて、サバイバルゲームが行われるが、脱落者は即、死亡だ。第1話は「ムグンファの花が咲きました」(日本の「だるまさんが転んだ」と同じような遊び)で、人形が後ろを向いて「ムグンファの花が咲きました」という間に前に進み、人形が前を向いた時に動いた者は銃殺される。

 このゲームの主催者側は「外の社会で不平等と差別に苦しんだ人たちだからこそ平等に闘うことができる」とするが、主催者側の人間たちはピンクの服を着て顔も出さない。ローマ市民が格闘場で下の階級の者たちを闘わせて楽しむような構造だ。

 こういう構成のドラマは日本にもあったように思うが、なぜ今、大ヒットしているのだろうか。世界中で貧困や差別が広がり、固定化された階級格差の中で、生存競争に明け暮れている人たちが多いからのようにも思う。視聴者が自分たちの置かれている状況を、このドラマの中から感じてヒットしているのかも知れない。

 韓国のネットでは「イカゲーム」のパロディーが盛んだ。最初のゲームは「住宅価格の上昇」。持ち家のない人は脱落。2番目は「コロナ」。余力のない自営業者は脱落。3番目のゲームは「物価上昇」。財力のない庶民は脱落する。

 ドラマの中では競争は平等のように見えているが、実はそうではない。ライターを持っているものは針を熱して「カルメ焼きの型取り」ゲームを簡単に通過する。

 大学入試や就職試験は平等を装いながら、実は裏でコネや不正な方法を持っているものが合格するという現在の韓国の競争社会の構造をドラマは極端な形で示している。

 この「イカゲーム」のファン・ドンヒョク監督はハンギョレ新聞などとのインタビューで「この社会の勝者は敗者の死体の上に立っている。その敗者を忘れてはいけない」ということが作品のテーマだと説明している。

 この「イカゲーム」のヒットは、現代を生きる人間たちは、いつ失業や差別や病気や事故で「脱落者」になるかもしれないという環境の中で生き、その敗者たちがまた激烈な、平等ではない競争社会の中で生きて行かなければならない現実の反映のようにも見える。

 筆者はこのドラマをあまり娯楽としては楽しめなかった。生きづらい世の中をゲーム化していること自体に違和感を感じてしまったのだが、これを単に「ドラマ」と楽しむ人が多いのだろうか。

 ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly10月11日号から転載)

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