国際
政治・経済・国際の解説&分析記事

〝文化大革命〟が再来か 見え隠れする習政権の限界

写真はイメージ

 7月1日、中国共産党は党創建100年の祝賀大会を盛大に開催した。習近平総書記(国家主席)は一党支配の正当性を誇示するとともに、長期支配も見据える。その中国で、毛沢東が主導し、共産党の大きな負の遺産である〝文化大革命〟の再来を彷彿(ほうふつ)とさせるさまざまな事象が現れている。その背景には何があるのか。(編集部)

 

 5月16日は中国の文化大革命(文革)(※)が始まった日だ。55年前のこの日は「中国共産党中央委員会通知」が公表され、10年間にわたる〝暴力革命〟の扉が開かれた。55周年になる今年にその「通知」が発された日に近づくと、不穏なことが多く起こった。

 ※文化大革命 中国共産党の毛沢東(もう・たくとう)が大増産政策「大躍進」運動の失敗で失った実権を劉少奇(りゅう・しょうき)らから奪還しようと始めた政治運動だ。1966年5月16日に文革の綱領的文書「5・16通知」を党が採択して発動。「造反有理」(反逆には道理がある)を掲げ、毛に忠誠を誓う「造反派」の若者らが、元資本家らに「反革命」のレッテルを貼り暴力的につるし上げた。寺院など貴重な文化財も破壊。造反派内でも路線対立で闘争が起き大混乱に陥った。共産党は81年、文革を全面否定する「歴史決議」を採択した。

 まず「記念無産階級文化大革命55周年(案)」がネットに現れた。そこに書かれたのは5月16日に北京の「紅塔礼堂」あるいは「官園礼堂」で文化大革命を記念する活動を行う予定で、北京の紅博会、毛沢東思想旗幟網、北京紅歌会など全部で九つの組織が主催になり、公に文化大革命を記念しようと呼びかけた。

 同時に一つの動画も筆者の知り合いの間で流れて話題になった。

 中国北京大教授、毛沢東左派の代表人物である孔慶東(こう・けいとう)は「毛沢東思想は人類6千年以来、一番偉大な思想で、超える人はいない」と言った。その映像もわざと流出させたとみられる。

 一連の出来事は、文革再来を彷彿とさせた。当時を知る体験者たちをぞっとさせた。

 同時にこれまで鳴りをひそめていた文化大革命時代の歌や、服装が堂々と学校などに現れて、党史教育だと称してさらし首のようなシーンをまねする小学生さえいた。

 

どこに行くのか

 

 毛沢東崇拝の歌と踊りも復活してネット上にあふれている。赤い旗を振って紅衛兵の格好をして歌う人々。その恐ろしい場面を見て文革時期にひどい目に遭わされた多くの人々は、首をかしげて嘆いた。一体中国はどこへ向かおうとするのか?

 今の中国に漂う文化大革命の怪しい雰囲気は新版「中国共産党簡史」と関係がある。

 今年2月末に「中国共産党簡史」が人民出版社で刊行された。「新華社」によると「簡史」は今年中国共産党設立100周年を記念するために出版された全国民が勉強すべき1冊であった。しかし、海外にいる中国専門家の中でそれは「習版中共簡史」と称され、大きな波紋が広がっている。

 「習」は習近平(しゅう・きんぺい)の略称で、「習版中共簡史」は文革を肯定する傾向があると「中国文化大革命データバンク」などの創立者、カリフォルニア州立大ロサンゼルスキャンパス図書館に勤める宋永毅(そう・えいき)が自由アジアラジオの取材で指摘した。

 理由の一つは「習版中共簡史」の内容について、文化大革命に関する記述が旧来バージョンより大幅に削減されたことだった。

 次に「文革」は「大きな間違い」から「新時期社会主義の探索に貴重な経験を提供した」に変えられたこと。その三は「文革」は毛沢東が責任を負うべき「共産党の大きな間違い」から「腐敗を反対するために提起された運動」だと書かれたことだ。

 結局のところ、文化大革命は徹底否定から評価すべきように美化された。その上、全部で531ページの「習版中共簡史」は文化大革命に関する記述はわずか12ページで、習就任以来の功績に関わる記述は213ページも占めた。これは「共産党簡史」というより「習近平詳史」と呼んだほうがふさわしいかもしれない。

 「習版中共簡史」が刊行後、文化大革命をたたえる動きが目立った。これまで封印された革命的な現代京劇は堂々と上演されて、中国共産党をたたえる「紅色文化」は主流となった。その裏に中国の民営企業家たちは取り締まりを受けて日々、悲鳴を上げている。

 また、普遍的価値を広める「公共知識人」のSNSは全部閉鎖され、人権弁護士も逮捕され続けた。ネットは真相を言う人々がさらし首にされる場と化して、米国や日本のいいところを言うだけで「漢奸」と罵倒される。

 今年5月6日に中国共産党校教授・劉玉瑛の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」が暴力的なネット攻撃にあい、閉鎖に追いやられたのもその一例だ。

 彼女は自分の「微博」を通して日本、カナダの医療や社会福祉制度の中国よりいいところを紹介しただけで「西方文化崇拝」などとひどく批判された。いまの中国のネットで行われたさらし首行動は、かつて文化大革命時期に行われたリンチと変わりない。まさに形を変えた文化大革命の再来であり、個人攻撃がまん延し、普遍的な価値観について議論はできなくなっている。

 

毛沢東ほどの〝神〟

 

 先ほどの無産階級文化大革命55周年記念イベントは、行う直前に当局に止めさせられたが、その目的は活動自体を非難するものではなかった。

 背後に習政権内部の権力闘争が見え隠れしている。一応、権力基盤を固めたように見えた習近平は、文化大革命の見直しを通して、共産党の威信を回復させようとしている。その上で、習個人への崇拝につなげ、自分を毛沢東ほどの〝神〟につくり上げようと企んでいるとみられる。ただ、党内外からの抵抗も非常に強いのが実情だ。

 習および王滬寧(おう・こねい)をリーダーとする極権派と、李克強(り・こくきょう)首相を代表する改革開明派との激しい権力闘争が横たわる。

 このような状況で、「文革」を完全肯定することは難しい。さらに、元国家主席の胡錦涛(こ・きんとう)ら政治老人派も文革を否定する勢力だ。加えて「紅二代」(共産党革命に参加した高級幹部の子弟)の中に文革でひどい目に遭わされた人々もかなり多くいるので彼らも文革肯定論に賛成しにくい。

 それゆえ、習ら極権派は文革を肯定し、名誉を回復するところまでは実現できていない。

 もし文化大革命をたたえ、記念活動を許せば、乱闘などの社会動乱につながることもあり得る。まさに「文化大革命」の問題はもろ刃の剣で、気をつけないと自分の権力に危険をもたらす可能性が高い。

 今年は中国共産党設立100周年。共産党をたたえるさまざまなイベントは全国規模で展開されている。文化大革命に対する態度が示したように、それらイベントからも党内の権力闘争の信号が読み取れる。来年秋に開かれる予定の20回全国人民代表大会で中国最高指導部の人事変動が公表される。その人事をめぐり、文化大革命肯定派と反対派の争いも一段と激しくなるだろう。(敬称略)

【筆者】

中国ウオッチャー

龍 評(りゅう・ひょう)

 

(KyodoWeekly7月12日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ