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シンガポールの起業環境 異国で感じた成功へのサポート

写真はイメージ

 筆者がシンガポールに出版社を設立して2年余り経過した。周囲を見渡せばさまざまな業種の比較的若い日系企業が続々シンガポールに進出しており、当地で起業する日本人も少なくない。なぜ、シンガポールは企業を引き付けるのだろうか―。シンガポールにおける進出・起業まわりの雰囲気の一端を現地から紹介する。

 

 企業が日本からシンガポールに進出する目的はさまざまだ。進出しても事業が軌道に乗るとは限らず、撤退も少なくないが、確かなことは「チャンス」を見いだしているということだ。

 分かりやすい例を挙げるならば、日本には四季があり、シンガポールは通年で夏である。もし、夏季がハイシーズンという商品・サービスを取り扱っているならば、シンガポールおよび周辺国では年間を通じて売り上げが期待できるかもしれない。

 あるいは、日本もしくは日本国内の地域とシンガポールの物価などを比較すると、シンガポールの方が高価になるものもあれば、逆に安価に手に入るものもある。

 事業を展開する上で何が必要かは産業や企業により異なるが、もしシンガポールで安く入手できるものばかりで運営できるのであればコストは抑えられる。

 こうした要素の組み合わせは千差万別であり、始めてみなければ分からないことも多いので正確に見積もることは不可能だ。ただ、進出企業はやりくり全体の見通しとして「うちの会社にとっては有利」と判断したと言えるし、進出済み企業だけでなく、進出を検討中あるいは考えたこともないという企業も含めて、成功する可能性を秘めた企業は潜在的に非常に多いのではないだろうか。

 

政府が成功を応援⁉

 

 海外で会社を立ち上げるというのは言語の壁もあり、法規制や商慣習の違いもあるので、なんとなく難しそうなことではある。

 シンガポールでは行政手続きはオンラインで完結することが普通であり、会社設立も例外ではない。これを便利と感じるか、抵抗感を感じるかは世代にもよるだろう。

 ただ、シンガポールでは会社設立を支援する民間のサービスが非常に発達している。大げさなようだが、シンガポール政府は、国民か外国人によるかを問わず、企業や個人の経済的成功を分け隔てなく、応援しているように思う。

 強く印象に残っているエピソードを紹介したい。

 オンラインでの手続き中に、記入の仕方が不正確だったためか次のページに進めないということがあった。

 そこで、所管の会計企業規制庁(ACRA)にEメールで問い合わせたところ、1時間ほどで担当者から電話がかかってきた。

 しかし、その時、所要のため外出しておりパソコンを開くことができない状況であったため、その旨を伝えたところ、「明日午前9~10時の間に私に電話をかけてほしい」ということであった。

 その日の夜。明日午前に問題解決に向けたアドバイスを得られると分かっていたが、起業を前に気がはやっていた筆者は、再びオンラインの手続きをあれこれ試し始めた。すると、次のページに進むことができてしまったのである。

 さて、翌朝。お騒がせしてしまったなという気持ちで電話すると、担当者は開口一番「もしかして問題は解決したのではないか」と言うではないか。親身になって事前に状況を確認してくれていたのである。

 東南アジアの国々では、行政とのやり取りの進捗(しんちょく)は担当者のモチベーション次第ということはよくある。書類を提出しただけではどんどん後回しにされていく。

 そのため、「アンダー・ザ・テーブル(袖の下)」が欠かせなかったりするが、シンガポールではそのようなことは必要がなく、全くスムーズである。

ビッシリ企業が入るサービスオフィスの様子。共用のスペースがあり、入居企業間で気軽な情報交換が行われている(筆者撮影)

 

増えるサービスオフィス

 

 スタートアップ企業や、進出企業の大きな受け皿となっているのがサービスオフィスである。

 中心部ではすべてのオフィスビルに、ビジネス機器などを備えたサービスオフィスが入っているといっても過言ではないほどに、次々サービスオフィスができており、WeWork(ウィワーク)やJustCo(ジャストコ)といった大規模に展開しているブランドだけではなく、FinTech(フィンテック)関連企業向けなど一つの産業に特化したものもある。オフィススペースの大小、料金などさまざまメニューがあり、国際性は豊かだ。テナント企業同士のコラボレーションを促すコーディネーターが常駐しているところもある。

 コロナ禍にあってシンガポールでも在宅勤務が浸透した。その中で、既に進出している比較的大きな企業の間でも、賃貸オフィスを契約更新せず、サービスオフィスを活用する動きもある。

 自社会議室などの利用機会が減少していることなども背景にあるが、新規ビジネスを模索する企業が非常に多い中で、新しい企業とのコラボレーションの可能性に注目した動きでもある。

 シンガポールには世界中から多くの夢とチャレンジが集まっている。

【筆者略歴】

シンガポール新聞 発行人・編集長

竹沢 総司(たけざわ・そうし)

1979年生まれ。専門紙・誌の記者、編集者として勤務。2018年シンガポールに渡り、日系出版社に編集者として勤務した後、19年シンガポール新聞社設立。シンガポール・日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)のシンガポール関係者に向けて経済情報などを日本語で発信している。

 

(KyodoWeekly5月17日号から転載)

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