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途上国の期待高まる「イベルメクチン」

日本ではマルホが「ストロメクトール」の商品名で販売しているイベルメクチン=同社ホームページから

 ノーベル医学生理学賞を2015年に受賞した大村智・北里大特別栄誉教授が開発した抗寄生虫薬イベルメクチンに対し、新型コロナ治療薬、予防薬としての使用に途上国の関心が高まっている。ペルーなど中南米諸国のほか、アジアではインド、フィリピンで限定的使用が始まっている。

 米食品医薬品局(FDA)などが、新型コロナへ治療薬としての使用に否定的な見解を今年になって相次いで発表しているせいか、日本ではあまり注目されていないようだ。ただ、東京都医師会の尾崎治夫会長は3月9日、主に自宅療養者の重症化を防ぐ目的でイベルメクチンの緊急使用を提言している。

 北里大研究所は、米FDAなどの見解に対する反論をホームページに連日掲載、3月末に大村教授も連名で公表した論文では今年1月末までに世界27カ国で91件の治験および治療目的での使用がされており、うち42件、約1万5千人の結果として、早期治療で83%、後期治療で51%、発症予防で89%の改善が認められたとしている。

 論文はイベルメクチンの特徴として(1)新型コロナウイルスの複製を阻害する(2)強力な抗炎症作用がある(3)新型コロナの新規感染を防ぐ(4)新型コロナ患者の回復を早め、入院の必要性と死亡率を減少させる―と結論付けている。つまり治療薬としてだけでなく、ワクチンと同様に予防効果もあるというのだ。

 しかし、既に30年以上前から熱帯性の抗寄生虫薬や疥癬(かいせん)治療薬として世界各国で使用されているため「製薬企業としては、いまさら新型コロナへの適応を取得する開発研究を行っても、その資金を回収するだけの収益が見込めず、適応拡大を行う意思がない」ことが問題となっているとも論文は指摘している。 イベルメクチンへの米国などでの否定的評価には、ワクチン製造社を含む製薬会社のさまざまな思惑が絡んでいるようにも思えてくる。

 インドではイベルメクチンの効果とともに価格が3ドル未満と、既成のワクチンよりも大幅に安いことに注目、昨年末から使用に向けて治験を続けている。南アフリカは今年1月に新型コロナ治療薬として正式に承認した。

 フィリピンでは3月に食品医薬品局が「重症患者の要望があった時など人道的使用は認める」とし、医薬品としての承認にも前向きな姿勢を表明。既に製薬会社2社がイベルメクチンのフィリピン国内での製造に名乗りを上げている。

 新型コロナワクチンがまだ200万回分ほどしか入手できていないフィリピンでは、3月29日に新規感染者1万16人を記録、過去最高を更新するなど再び感染が急拡大している。

 普段は強気のドゥテルテ大統領も「国民の前で私は泣きたい気持ちだが、その涙も枯れ果てた」と弱気な発言をしている。

 その中で、フィリピンでも動物用には流通しているイベルメクチンへの期待は高まる一方で、下院保健委員会も「使用許可を検討すべきだ」とFDAなどに要請している。

 日刊まにら新聞編集長 石山 永一郎 

 

(KyodoWeekly4月12日号から転載)

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