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異常気象が後押しする貴重な古美術品の流出増大

 ミャンマー中部に、2014年に世界遺産に登録された「ピュー王国」の古代都市群がある。ピュー王国は紀元前200年から後9世紀ごろまで栄え、ユネスコによると、その遺跡は約2千年前に東南アジアに仏教が伝来したことを示す最古の証拠だという。ピュー王国時代とその前の青銅器・鉄器時代に生産された遺物や古美術品が、違法な発掘と売買で国外に流出し、ミャンマー政府は取り締まりに頭を痛めている。

 ミャンマーでは中部を中心に、遺物や古美術品が今も広範囲に地中に埋まっている。これまで掘り出された青銅や鉄製の武器、装飾品、ピュー時代のガラス製のさまざまな形のビーズ製品など半数は、農作業や井戸掘りなどをしていた農民によるものだ。10年ほど前まではその価値を知る人は少なかったが、高い技術と芸術性に富んだ古美術品は、一部のコレクターらを魅了していた。

 それが、お守りなどとして中国で人気が高まり、値段が高騰した。例えば、楕円(だえん)形の長さ4センチほどのビーズは、10年前は日本円換算で1個300円ほどで仲買人に買われていた。それが現在は100倍の1個約3万円。動物をかたどったビーズであれば値段は跳ね上がり、非常に珍しいと判断されたデザインのビーズは1個が1500万チャット(約116万円)になることもあるという。

 国外流出が増大した背景には、異常気象による干ばつもあるようだ。農作物の不作に苦しむ農民らには、密輸業者が即座に支払う代金は非常に魅力的なのだ。最大都市ヤンゴンやマンダレーなどにいる密輸業者に発掘された発掘品の写真を携帯電話で送り、商談が成立すれば代金はインターネット上で受け取れる。発掘品は詰め合わせクッキーの箱などに隠され、買い手に送られる。許可なしの売買はもちろん、遺物や古美術品の保護保存法に触れる。

 しかし、異常気象による干ばつに終わりは見えず、政府の用水路建設も遅々として進まない現状に、刑務所行きの危険も承知で発掘に従事し一獲千金を夢見る農民は増える一方だ。昨年10月下旬、中部の町マンブーで、発掘取り締まりにやって来た警察官らに、農民ら300人余りが投石する事件が起きた。農民は発掘のために、約500平方メートルにつき20万~30万チャット(1万5千~2万3千円)を土地所有者に支払っていたという。

 政府は発掘品を密輸業者ではなく、国に渡すよう奨励している。昨年11月には、ピュー王国時代に作られた黄金のミニチュア仏塔を発見した農民は、国に引き渡し100万円相当の報償金を得たという。だが、長い軍事政権時代の後遺症か、政府機関は農民にとって近寄りがたい存在だ。

 このままでは、貴重な歴史的産物の国外流出を止められそうにない。ミャンマーの英字紙「ニュー・ライト・オブ・ミャンマー」のエイ・ミン・スー編集局長は「国に発掘品を渡せば密輸業者より多くの報酬を受け取れると農民に理解してもらうことが、古美術品の保護につながる」と語っている。

 ジャーナリスト 舟越 美夏

 

(KyodoWeekly1月18日号から転載)

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