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米新政権の誕生をどう見るか 中国、“老朋友”の対中政策

 米大統領選をめぐっては混乱が続いたが、バイデン氏が次期大統領に就任することで決着した。バイデン政権が設立準備に入ったとの報道が出始めた。トランプ大統領の対中政策で、敵国だとみなされた中国も複雑な心境にある。

 

 そもそも中国のSNSでは米大統領選が終盤に入ったときから、バイデン氏に「拜振華」というあだ名をつけ、彼に対する好意を表し、勝利を望んでいた。

 しかし、バイデン政権になったら、中国に対して融和する政策ではなく、より厳しくなることも予想される。このような米中関係の揺れ動きは、日本に一番影響を与えるであろう。

 バイデン氏を「拜振華」と呼ぶのは「拜登」という彼の中国名に由来する。一部の中国人専門家はバイデン氏の性格が温厚で中国に対してトランプ氏より強硬ではないから、彼が米国の大統領になったら米中関係が改善されると思って、英語の音読みで中国語当て字の「拜」を中国の姓にみなして、「振華」と名付けた。字面の通り、バイデン氏の対中政策なら、中国も振興できるとの期待を込めて付いたあだ名であった。

 なぜバイデン氏が中国の人々にそのような印象を与えたのか? それは彼が、オバマ前大統領時代に副大統領だったことと深い関係があった。その時期から中国のマスコミのバイデン氏に対する報道は極めて友好的で、まさに中国の古い友人、または習近平氏と親しいパイプをもつ米国の大物政治家として報じられた。例えば「習近平がバイデンとオフレコ会談で予定より1時間の延長」というタイトルの「鳳凰網」2013年の報道で、下記のような言葉が記しされている。

 「習近平が自分の“老朋友(古い友人)”バイデンの訪問を熱烈に歓迎する」と報道。この記事では日本についても言及した。

 「日本と中国の紛争において安倍政権は米国に日本側に立つようにと促した。防空識別圏の問題に関して、米国も盟友であった日本および韓国と同様に中国が設立した防空識別圏を拒否したと期待された。しかしワシントンがこのことに対して極めて慎重だ。つまり米中協力の促進および新型大国関係の構築を進める背景の下で、中国との摩擦をなるべくさけたいというのが米国の考えだ」とのことだった。

 報道ではバイデン氏と習氏の談話内容を多く語らなかったが、日本に関して何を語ったかたやすく想像できる。2016年にバイデン氏が日本の海江田万里議員(現立憲民主党)に「習近平氏に迷惑をかけられない」と言った記事はいまだに多く中国語のサイトに掲載されているのであった。

 米民主党と中国の友好関係の歴史は長い。クリントン元大統領時代が特にいい時期だった。かつて筆者が中国西安にある世界遺産「兵馬俑」を見学したときに、クリントン元大統領一家が兵馬俑の景観を独占して、観客立ち入り禁止の位置で撮った写真を何枚も見た。それは中国政府の特別招待を受けてできることで民主国家なら特権だと指摘されるに違いがないような写真ばかりだ。

 そのような招待は中国独自の慣例として継がれ、数多く中国を訪問したバイデン一家が特別招待を受けないはずはない。

 バイデン氏が孫娘や息子とともに中国を訪問したときの写真はネットで多く掲載されている。バイデン氏が北京で庶民の店でジャージャー麺を楽しんでいる写真や、バイデン氏と習氏が仲良く肩を並べる写真も数多くあった。これらはすべて公開された国事招待だ。これ以外にも公開されていない招待も数多くあるだろう。国益のためなら金に糸目を付けないのが中国政府の一貫した姿勢だ。

 「人民公敵」だと批判されたポンペオ国務長官と、バイデン氏に関する中国語の報道を比べてみると、中国側のバイデン氏に対する期待の大きさもわかる。

 しかし、それはあくまでもトランプ氏と比べて生み出された期待で、バイデン政権になっても米中関係がトランプ政権前のような米中関係に戻ると中国はみていない。

 中国政府に所属している「環球時報」がバイデン政権の対中関係をつぎのように分析した。

 「トランプ政権が多くの対中強硬のバブル(状況)を作った。バイデン氏が就任して、その強硬なバブルを取り除くことが可能である。しかし米中関係を緩和的に逆転させるという幻想を抱く必要はない。勢いから見ると米国が中国に対して競争と防犯の考えは強くなりつつある」

 中国復旦大学アメリカ研究センター副主任である信強氏も「環球時報」の取材を受けて、バイデン氏就任後に米中関係が一息入れる期間をもたらしてくれると見ているが、「米政府の対中政策は方向を変えることはしない」と指摘する。

 「中国は米中間のリーダー外交と経済協力の面で突破を計ることができるが、すでに壊れた戦略互信を回復させるのは難しい」と信強氏も強調した。

 これら専門家のバイデン政権の対中関係の見方はイコール中国政府の見方で、よく考えると民主自由の価値観に持つ国にとって有利だとは言い難い。

 11月25日、習近平・中国国家主席は、バイデン次期大統領にに祝いのメッセージを送った。「両国が意見の対立を抑え、関係を安定させることを願う」と呼び掛けた。

 ここから読み取れるのは、トランプ政権との対立を意識し、両国の関係の見直しを本格化させたいとの狙いがあるようだ。 少し時間をさかのぼるが、中国政府のスポークスマンが11月9日の記者会見で再び米中関係を健康、安定に発展する原則を繰り返し、引き続き対話する姿勢を強調した。つまり誰が米国の大統領になろうと、中国は国益のために米国との関係を維持したい。同時に中国中央テレビ直属の「微博」がすでにバイデン家族を「輝かしい」と褒め始めていた。

 今後、米国の分断ではなく統一を目指すバイデン氏はトランプ氏の支持者を無視できない。 そのため親中の姿勢を払拭(ふっしょく)する必要が出てきた。だから中国が望んだように対中関係の全面修復ではなく、人権などの分野でもっと厳しい対中姿勢を示す可能性が十分ある。

 またバイデン氏が先進国と手を組んで中国包囲網を作るとの予測もある。

 

役立たずの中立

 

 選挙でバイデン氏の言葉から彼の中国に対する見方が厳しく変わったと見る専門家もいるが、忘れてはならないのはバイデン氏が中国と深いつながりを持っていたことだ。

 バイデン氏は表向きには中国に対して厳しい姿勢を示す一方、本当は以前と同じく生ぬるい対中政策をとるかもしれない。

 何より彼の有力支持者の中で、中国とビジネスを重んじる人が多くいる。さらに彼が習氏との友情も厳しい対中政策を取る防波堤と成り得る。

 ただ、かつて中国政府がオバマ政府と南シナ海を軍事化しないなどの約束をしながら、軍事施設がドンドン増えた事実も忘れてはならない。

 尖閣諸島問題も同じだ。2013年に尖閣諸島防空識別圏を中国が設立したあと、日本の猛反対にもかかわらずバイデン氏が「習氏に迷惑をかけられない」と明言した。

 だからバイデン政権の対日政策も対中と同様に本気になれないであろう。かつてオバマ政権の対日政策からバイデン氏の対日姿勢を見ると、それは役立たずの中立、あるいは無駄な中立だと筆者は分析する。

 菅義偉首相はバイデン氏に祝いのメッセージを送って、また日米同盟を共に強固なものにすると公言したが、トランプ氏と違ってバイデン政権が中国との貿易や経済往来を重視し、中国を配慮する生ぬるい同盟にされないように気をつけてほしい。

 特に尖閣などの難しい問題に関して中立を保つという建前で今以上に日本が不利に向かわないように手を打つ必要がある。 特に中国市場を重視するあまりに日本パーシング(通過)が2度と起こらないように、注意すべきだ。

【筆者】

中国ウオッチャー

龍 評(りゅう・ひょう)

 

(KyodoWeekly12月14日号から転載)

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