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アフガニスタン、未来を担う層が標的に

 ペシャワール会の中村哲医師がアフガニスタンで銃撃されてから1年が過ぎた。現地では、中村氏の名を冠したスポーツイベントや、同氏を題材にした絵本が出版され、生前の活動がより広く知られているという。共同通信の安井浩美カブール通信員によると、反政府勢力タリバンの広報官も哀悼の意を表した。

 だが残念なことに、現地の治安は急速に悪化している。トランプ米大統領が、選挙での敗北を認めない一方で進めている、アフガニスタンからの米軍撤退が、治安悪化に拍車を掛けるのではないか。そんな不安が市民の間に渦巻いている。

 米国とタリバンは今年2月末、アフガン政府軍とタリバンの間での捕虜交換や米軍撤退などで合意し文書に署名した。

 しかしその直後に、アフガニスタンのガニ大統領が「タリバン兵解放に合意していない」と述べ、雲行きの怪しさを感じさせた。その後、武装攻撃が各地で頻発し、アフガン政府とタリバンとの間で進められていた和平交渉も頓挫した。

 卑劣なのは、これから生まれる命を含めた次世代を担うはずの層をターゲットにしていることが明らかな点だ。首都カブールで5月12日、病院の産婦人科病棟を武装集団が襲い、母親や妊婦、新生児を含む少なくとも24人が殺害された。大混乱する現場に取材で駆けつけた安井通信員は、病院の男性職員に頼まれ、分娩台と壁の隙間で倒れていた複数の女性の遺体を分娩室から運び出した。女性たちは、これから出産するところだったとみられる。

 11月初旬には、カブール大法学部に入り込んだ3人組が自爆攻撃と銃乱射を仕掛け、学生ら22人以上が死亡。そのうちの1人、モハメド・ラシドさんは、同世代に信頼の厚い学生だったという。「人生は挑戦と痛み、悲しみ、プレッシャー、それに困難な問題に満ちている」「それでも、唇にはほほ笑みがある」。モハメドさんが生前にインターネットに投稿したビデオは、死去後も多数にシェアされ、英BBC放送も取り上げた。

 この事件の少し前には、カブール大を目指す高校生らが学ぶ「塾」が自爆テロで攻撃され、20人余りが死亡した。

 武装攻撃を誰が仕掛けているのかは明確ではない。カブール大襲撃では「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したが、アフガン政府は「タリバンの仕業だ」と主張した。

 米国防総省が来年1月半ばまでにアフガン駐留米軍を現在の4500人から2500人にまで削減すると発表した4日後、首都カブールにロケット弾が撃ち込まれ、市民8人が死亡した。

 「撤退には適切な時期を見極めてほしい」とアフガン政府側が希望しているのも無理はない。この地には米軍やタリバン、IS、イランが支援するシーア派民兵組織などの折り合いが良いとはいえない組織が武器を携えており、米軍の撤退の仕方によってはアフガンは紛争状態に陥る可能性さえある。

 タリバンの報道官は今年11月末、アフガン政府との和平交渉再開を発表したが、安井通信員は「和平交渉が長引くほど国内の治安は乱れタリバンの勢いは増すだろう」と危惧している。

ジャーナリスト 舟越 美夏

 

(KyodoWeekly12月7日号から転載)

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