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ベスト&ブライテスト

 バイデン次期米政権の外交チームで注目すべきは、国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任するジェイク・サリバンであろう。44歳と史上2番目の若さでの就任であり、「米外交のスター」と称されている。

 サリバンはエール大学で政治学を専攻し、最優秀学生のみに与えられるローズ奨学金を得てオックスフォード大学に留学、その後エール大学法科大学院を修了するという絵に描いたようなエリート教育を受けた。

 高校時代からジョンソン大統領の貧困撲滅の「偉大な社会」構想の信奉者だったというから、若いころからの民主党びいきである。

 2009年のオバマ政権発足とともに、国務省入りし枢要ポストである政策企画局長に34歳の若さで就いた。政策企画局長は冷戦戦略の父であるジョージ・ケナンらそうそうたるメンバーが歴代務めている。日々の案件から離れて長期戦略を練るポジションだ。その後バイデン副大統領の補佐官に転じた。

 サリバンはオバマ政権時代に二つの業績を上げる。

 一つはイラン核合意である。強硬派のアハマディネジャド・イラン政権がウラン濃縮を進め軍事的緊張が高まる中で秘密交渉を続け、2015年夏の包括的共同作業計画(JCPOA)合意を実現した。

 もう一つは米外交・安全保障の焦点をロシアや中東から中国に移す「アジアリバランス」政策を立案し、それは環太平洋連携協定(TPP)構想となった。トランプ政権はTPPを拒絶し、中国への高関税など強硬策に踏み出した。手法こそ異なるが、サリバンが着手した中国最重視の態勢は引き継がれた。

 サリバンは2016年のトランプ当選に衝撃を受けた。ラストベルトの中流・労働者階級の票を掘り起こした「米国第一主義」が、国民に歓迎されている実情を思い知った。

 米外交は、サリバンら米東部の官僚や知識層が牛耳ってきたが、それは国民の願望からかけ離れていたというわけだ。

 このサリバンが要を占める外交は、トランプ以前の伝統的な世界関与政策には戻らないとみるべきだろう。トランプの「米国第一主義」のバージョンアップの外交が始まるのだ。

 ところでサリバンより若く国家安全保障問題担当補佐官となったのは、ケネディ政権で42歳で就いたマクジョージ・バンディだ。43歳で大統領になったケネディととともに当時「ベスト&ブライテスト(最良にして最も聡明)」と呼ばれたが、結局ベトナム戦争への深入りという悲劇に国を陥らせた。

 現代のベスト&ブライテストが世界を悲劇に陥らせないことを祈るのみである。(敬称略)

(共同通信特別編集委員 杉田 弘毅)

 

(KyodoWeekly12月7日号から転載)

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