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「相変わらず」の笑顔

フィリピン・ルソン島を横断した台風22号で浸水した街並み(提供写真)

 11月12日夕、フィリピンの地方に住む知人女性(26)からSNSでメッセージが届いた。

 「こんにちは。台風で実家が壊されてしまいました。私たちの家には屋根がありません。少し助けてくれませんか」

 彼女はスラムの出身だ。添付された実家の写真は、トタン屋根が破れ、外にはゴミが散乱し、木々がなぎ倒された様子が写し出されていた。

 「実家に住んでいる父は鶏を16羽飼育していましたが、15羽が洪水で死んでしまいました。犬も1匹死にました。まずは散乱したゴミの片付けをしないといけません」

 別の写真は、洪水被害に遭った街の様子を写し出しており、腰の辺りまで浸水した住民たちが、家財道具を家の外に運び出していた。

 慌ててニュースを見てみると、フィリピンでは11日から12日にかけて、台風22号がルソン島を横断し、13日現在、39人が死亡、12人が行方不明になったと報じていた。

 特にマニラ首都圏の北東部は大洪水に陥り、英字紙では、胸の辺りまで浸水した住民が、悲愴感あふれる表情で、バケツを運んでいる写真が掲載されていた。不謹慎かもしれないが、フィリピンに住んでいた私には「相変わらずだな」と、つい懐かしくなった。

 フィリピンは毎年この時期、つまり日本の秋ごろは台風の季節である。

 私がかつて住んでいたマニラ中心部も、台風や大雨になると、路上が膝まで浸水する大洪水に見舞われた。しかもほぼ毎年だ。新聞の社説などでは「この教訓を生かせ」みたいな見出しが踊っているが、私の知る限りで、過去の被害の教訓が生かされたと実感したことはなかった。

 だから、「相変わらず」なのだ。洪水被害の取材で思い出すのは2009年の台風襲来時だ。ルソン島中部に浮かぶラグナ湖周辺の被害が特に深刻で、街は水上家屋となり、首まで浸水するありさまだった。

 だが、子どもたちは水中に飛び込んだりしてパシャパシャと水遊びし、周辺にはバナナの木で作ったいかだが並んでいた。 そこには、いかなる環境にも適応しようとするフィリピン人たちのたくましさがあふれ、そして笑顔があった。

 「今世紀最大」といわれた台風が2013年に襲来したレイテ島では、死者・行方不明者が約7200人に上った。家々は吹き飛ばされ、ヤシの木はなぎ倒され、電柱が傾き、一面がれきの山と化していた。そんな凄惨(せいさん)な光景を前に、被災者に話を聞かせてもらうと、確かに窮状を訴えはするのだが、話の合間に、屈託ない笑みがこぼれるのだ。

 今回の洪水被害で連絡をくれた女性も、その後にビデオ通話で話をした。台風で一部が損壊した家の様子を映像で案内してくれたが、どこかでやはりほほ笑むのである。それはそれでフィリピン人たちの「相変わらず」な姿だった。

ノンフィクションライター 水谷 竹秀 

 

(KyodoWeekly11月23日号から転載)

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