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良心的兵役拒否は犯罪ではない

 徴兵制のある韓国で、信仰や非暴力・平和主義などの信念に基づいて「良心的兵役拒否」をした若者63人が10月26日、韓国中部の大田教導所(刑務所)内に設けられた「代替服務教育センター」へ入所した。

 新兵訓練所の入隊では丸坊主になった若者が家族や知人と別れを惜しむ光景が一般的だが、ここでは背広にネクタイ姿の若者が列をつくって入所した。

 63人は3週間の教育を受けた後に、大田教導所と木浦教導所に配置され、兵役の代わりに、刑務所内で食材の運搬や調理、配食などの仕事をはじめ、病気や障害のある受刑者への補助、洗濯物の処理などの業務を担当し、刑務所内の補助要員として合宿形式で服務する。

 給与や休暇などは、徴兵で入隊した現役兵と同じ待遇を受け、8日以上、服務施設を離脱した場合は刑事処罰を受ける。

 韓国では陸軍に入隊した場合の服務期間は現在、約18カ月だが、良心的兵役拒否者の服務期間はこの倍の36カ月になる。

 韓国では、健康な男性は兵役が義務付けられ、兵役拒否者は犯罪者として実刑判決を受けて服役した。朝鮮戦争以降、約1万9千人が良心的兵役拒否者として実刑を科せられてきた。この大半は「エホバの証人」の信者たちだった。

 「エホバの証人」の信者を中心に「良心的兵役拒否は犯罪ではない」という声が起き、訴訟などが起こされてきた。

 憲法裁判所は2018年6月、兵役法が軍への入営忌避者を処罰すること自体は合憲だが、兵役法が代替服務制を規定していないことは「良心の自由を侵害する」とし、憲法違反に当たるとした。憲法裁判所は2019年末までに代替服務制を導入すべきとした。

 大法院(最高裁)も2018年11月、宗教的な理由で兵役を忌避した男性の上告審で「宗教による良心的兵役拒否は兵役法が規定する正当な理由に当たる」と、有罪とした2審判決を破棄差し戻し、事実上の無罪判決を下した。

 韓国国会は2019年12月、兵役法を改正し、代替服務制を導入した。新制度では、代替服務審査委員会が審査を行うが、本当に「信仰」や「平和主義」から兵役を拒否しているのかどうかの判断は難しい。

 大法院は今年9月、2006年8月に「エホバの証人」の信者になったが2009年6月以降は宗教活動をせず、憲法裁判所の判断が出た後の2018年9月から聖書研究などの活動を始めて入営を拒否した男性に対して懲役10月、執行猶予2年を言い渡した原審を確定し、有罪とした。男性は2012年からさまざまな理由を付けて入営を延期し、憲法裁判所の判断が出た後に「宗教的理由」での兵役拒否を主張した。しかし、裁判所はこの男性が無免許飲酒運転などで7件の処罰を受け、銃器ゲームを楽しんでいたことなどから良心的兵役拒否とは言えないとした。

 韓国の若者にとって兵役は深刻な問題だ。兵務庁の資料によると、過去5年間で最も多い兵役逃れの方法は、故意に体重を増やしたり減らしたりするケースが115件(全体の33・6%)、精神疾患偽装が68件(同19・9%)、故意の入れ墨が58件(17・9%)だったという。

 韓国では、これまでに626人が良心的兵役拒否による代替服務が認められた。兵務当局では今後も年間600~700人の代替服務希望者が出るとみているが、刑務所での2倍の期間の代替服務は、決して兵役より負担が軽いとは言えないという。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly11月9日号から転載)

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