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急成長を見せるベトナム経済 インフラ担うビン・グループ

 ここ数年、ベトナム経済が急成長している。その成長とともに注目されているのが、ショッピングモールやマンション開発を手掛ける不動産最大手の「Vin Group」(ビン・グループ)である。今やベトナム人の生活に欠かせないインフラを担う。取材で現地を訪れた筆者がレポートする。(編集部)

ベトナムの町をバイクで移動する人びと=2019年12月、ハノイ(筆者撮影)

「Vin ○○」

 

 昨年12月末、米中貿易摩擦の影響を受け、アジアの国々の経済が低迷している中、安定的な成長を続けるベトナム経済に興味を持ち、現地で取材した。

 到着後、ベトナムの街で「Vin 〇〇」という表記を何度も目にした。驚くことに、コンビニはVin Mart、住宅の看板にはVin Homes、ショッピングセンターにはVin Comなど、とにかく何にでも「Vin」がついている。

 この正体について現地スタッフに聞いてみたところ、「それは全部、ビン・グループ傘下にある企業だよ」と教えてくれた。

 取材3日目、雲一つもない青空の下、首都ハノイにある「タイムズ・シティー」というマンション・コンプレックスを撮影した。

 少し高級感が漂う、団地のような高層マンションが何棟も立ち並ぶ。その他、ショッピングセンター、スーパー、コンビニ、病院、学校、と何でもある。

 偶然にも、現地での撮影を手伝ってくれていたリサーチャーやカメラマンらがそこに住んでいた。

 彼らの生活はほとんど敷地内で完結する。子どもたちはビン・グループ経営の学校へ行き、食料品はビン・グループのスーパーで調達し、週末には家族でビン・グループのショッピングセンターに行き、買い物や水族館で遊ぶ。

 もし、家族の誰かが病気になれば、徒歩5分の距離にあるビン・グループの病院で診察を受けることができる。

 今や、ビン・グループはハノイの街に住む人々の生活に深く入り込んでいるのだ。

 

成長企業へと進化

 

 ビン・グループは、1990年代に登場した新興財閥「コングロマリット」であり、ベトナム最大級の民間企業である。

 国内では、リゾート開発などといった不動産事業からスタートした企業で、今でも収益の大半は不動産業であるが、多角的な分野へ投資している。ビン・グループの売り上げは2015年から2019年に3倍以上になった。

 創業者のファム・ニャット・ブオン会長は、決断が早いことで有名だ。ロシアの大学卒業後、ウクライナで起業し、その会社が成功した後、売却した。その原資で、ベトナムに帰国し、不動産業に参入した。

 ベトナムは経済が成長するにつれ、中産階級の人口が増加した。スーパーで買い物をする人や、携帯電話やマンション、車を買うことができる人が増えたと同時に、ビン・グループもますます多角化し、今後のベトナム経済の拡大を見据えているようにも感じた。

 

次の成長の柱

 

 現在、ベトナム経済の柱となっているのは、縫製や電子機器の組み立てといった外国企業の下請けである。労働者の賃金が上昇していけば、現在の成長モデルには限界があるだろう。

 昨年末、ビン・グループは自社のスーパーやコンビニを他社に売却した。小売業から手を引き、今後はテクノロジーや製造業に力を入れようとしているとのことだ。

 製造業以外にも、ビン・メック(Vin Mec)という医療関係の事業として、ゲノム研究などを行っている。

 うまくいけば、これらの産業は雇用を生み出し、国の技術の高度化が見込まれ、ベトナムの次の経済成長の柱になり得る可能性がある。

 ベトナムでは会う人、会う人、エネルギーにあふれていた。「最近、良い仕事が見つかった。近いうちにマンションを買う予定だ。将来は車も買いたい」と楽しそうに話していた若いカップルの言葉を、今でも鮮明に覚えている。

 経済が成長するに連れ、ビン・グループも拡大していくと予想される。まだまだ貧富の差があるものの、このような企業が次々と生まれてくることを期待し、ベトナム経済に今後も注目していきたい。

[筆者略歴]

福島 優子 (ふくしま・ゆうこ)

フリーキャスター。現在は、NHKワールドT V「Newsroom Tokyo」の経済キャスターを務める 

 

(KyodoWeekly7月13日号から転載)

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