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10万円給付と比残留日系人

 新型コロナウイルス対策としての一律10万円の特別定額給付金の支給対象から、海外在住の日本人は4月の時点では外された。その数は2018年の推計で約139万人。アジア各国では「日本にいる外国人に支給されて海外にいる日本人に支給されないのはどうか」「国内経済対策という側面は分かるが、こういう支援策は今やグローバルな視野で考えるべきではないか」など不満の声を多々聞いた。

 ところが、ここに来て、自民党の岸田文雄政調会長(元外相)が海外在住の日本人にも1人10万円を支給する方向で調整していることを明らかにした。

 2020年度第2次補正予算で関連する経費は確保されたようで、在外邦人の期待が再び高まっている。

 ただ、支給システムをどうするかをめぐって「人手不足の在外公館には無理」「支給には2、3年かかる」との外務省側の反発もあるらしく、正式な支給とその方法についてはまだ発表されていない。

 アジアの日系企業で働く日本人駐在員の中には所得税は日本に納めている人も多い。また、日本料理店主など自営業の日本人も、日本企業進出の環境を整え、日本の経済発展の地歩を築くことに貢献してきたとの自負を持つ人も少なくない。在外邦人は今や日本の国政選挙で比例、選挙区選挙ともに参政権を持つようになった。

 リーマン・ショック後の2009年3月に実施された定額給付金では在外邦人は支給対象外だったが、このような差別・区別はやめるべき時代だと思う。かつての日本では、在外邦人は特権的な富裕層やエリートと思われてきたが、時代は変わった。

 アジアではタイ、フィリピンなどに多いコールセンターで月給15万円以下で働く日本人も多い。新型コロナによる打撃は、むしろ国外の方が苛烈なケースもある。アジアでは、現地採用の日本人が仕事を失ったり、自営業者が店の閉店を余儀なくされたりし、食うや食わずの状況に追い込まれている人もいる。

 そういう人たち以外にも、もし、フィリピンで給付金支給が実現すれば、最も喜んでくれるだろうと思う人たちがいる。戦後、日本人の子でありながらフィリピンに取り残され、近年の調査で日本国籍取得(就籍)がようやく認められた残留日系人たちだ。その数は約200人。彼らは戦後、日本人の子というだけでさまざまな差別を受けてきた。就籍によって自らのアイデンティーが確認でき、戦後の辛苦が報われたと喜び、フィリピン各地で今はひっそりと余生を送っている。

 彼らにとって10万円は大きいはずだ。長年の苦労へのねぎらい金にもなるはずだ、と思っている。

日刊まにら新聞編集長 石山 永一郎

 

(KyodoWeekly6月29日号から転載)

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