国際
政治・経済・国際の解説&分析記事

金正恩時代は「縮地法」を否定

 「縮地法/縮地法/将軍さま(金正日総書記)はお使いになる/東でピカリ/西でピカリ/天下を縦横無尽/千里の防衛戦を掌握し/将軍さまは行かれる/首領さま(金日成主席)がお使いになった縮地法/今日は将軍さまがお使いになる」

 これは北朝鮮で1996年に発表された歌謡「将軍様は縮地法を使われる」(作曲キム・ウルリョン、作詞チョン・リョル)の歌詞だ。軽快なリズムで、なかなか耳に残る曲だ。

 「縮地法」とは遠い距離を縮めて移動する仙術とされる。北朝鮮では、金日成主席が抗日パルチザン時代に、日本軍の討伐に対して神出鬼没ぶりを発揮したとし、金日成主席の神格化の中で「金日成主席は縮地法を使った」とした。

 1990年代になっても、金正日総書記の神格化作業の中で、金正日総書記も金日成主席のように「縮地法」を使われると称えた歌である。北朝鮮人民が「縮地法」を信じているとは思えないが、最高権力者の偶像化の中で生まれた歌だ。

 そんな北朝鮮で、党機関紙「労働新聞」今年5月20日付に「『縮地法』の秘訣(ひけつ)」と題された興味深い記事が掲載された。

 記事によると、金日成主席が解放後の1945年11月に平安北道龍川郡を訪れ、地元で開かれた宴会に出席したところ、参加者から抗日パルチザン時代に使った「縮地法」について話してほしいという要望を受けた。

 金日成主席によると、当時、日本はパルチザンがどこにいるかを探るために密偵をいたるところに配置し攻撃を仕掛けてきた。

 しかし、人民がそうした討伐隊の規模や移動をパルチザン側に知らせ、討伐隊が襲ってくると、もぬけの殻だった。

 その後に、隙を突いて討伐隊を攻撃した。日本は、パルチザンは「縮地法」を使って神出鬼没だと悲鳴を上げた。パルチザンが勝利したのは人民大衆の積極的な支持と助けがあったからだ。

 金日成主席は「そこにいた人がいなくなったり、いなくなった人が再び現れたりするような、地面を折りたたんで行き来するようなことはできない。もし『縮地法』があるなら、それは人民大衆の『縮地法』である」と語ったと報じた。

 北朝鮮では昨年3月に平壌で「第2回全国党初級宣伝活動家大会」が開催された。金正恩党委員長はこの大会に送った書簡の中で「重要なのは、首領は人民と離れている存在でなく、人民と生死苦楽を共にして人民の幸福のために献身する人民の領導者だということについて深く認識させることである」とした上で「もし偉大性を際立たせるといって、首領の革命活動と風貌を神秘化すれば、真実を覆い隠すことになる」とした。

 今回の「縮地法は不可能」という記事も、最高指導者を神格化してはならないという、金正恩党委員長の意向を反映したものだとみられる。

 国際社会からは何かとバッシングを受ける金正恩氏だが、時代の変化とともに、新たな指導者像をつくるために腐心しているようにみえる。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly6月15日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ