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謎深まるコロナウイルス感染源 中国内の報道から検証

 新型コロナウイルスをめぐりトランプ米大統領らは、中国湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所からの流出説を唱えている。一方、中国側は猛反発し、米中対立の火種となっている。〝真相〟は今後の調査に待たれるが、中国ウオッチャーの龍氏がこれまでの報道などをまとめ、検証した。(編集部) 

 

 中国では早い段階から、武漢にある国や地元政府の研究所と、新型ウイルスとの関係を議論してきた。一部専門家も、武漢発のウイルスが人災であり、天災ではないと追究し、政府の抑圧と対峙(たいじ)してきた。疑いの目は武漢にある二つのウイルスと関係がある施設に向けられた。武漢ウイルス研究所と武漢疾病対策センター(CDC、以下センター)だ。

 今回のウイルスを研究していた武漢ウイルス研究所から漏れたのではないかとささやかれた。センターからウイルスが広まったのではないかともいわれた。もちろん、現時点では確認されていない。感染公表後、武漢政府は素早く「武漢華南海鮮卸売市場」(以下、海鮮市場)を封鎖し、ここが新型コロナの発生源だ、と世界に印象づけた。

 一方、中国のウイルス専門家や一部マスコミは、それは真実を隠した、中国政府のカモフラージュだと主張した。

 中国華南理工大学生物科学与工程学院教授の肖波涛氏は、今回のウイルスが「市場以外」のところから流出した可能性があると指摘する。センターは海鮮市場とわずか300メートルしか離れていない。肖教授はセンターでは研究目的とする病原体の収集と分類をし、新型コロナの自然宿主であるコウモリを捕獲し、約600匹を管理していたと記す。

 

ホームページから削除

 

 今年2月26日、中国有力紙「新京報」も新型コロナの宿主関連で報道。それによると、2017年5月の地元紙「武漢晩報」がセンターの職員が防護器具を着け忘れ、コウモリの尿が体に落ちたり、コウモリの血液が研究員の皮膚に付着したりとの事故が発生したという。それを受け、研究員らは14日間、隔離された。まさに今回の感染者と同じような対応であった。

 センターの公式ホームページにはこれまで、多くのコウモリを捕っているところや、防護器具が粗末な研究現場の写真も多数掲載されていたが、トランプ氏ら米政府要人たちが中国政府の責任を追及する姿勢が鮮明になるにつれ、現在は削除されている。ただ、写真の一部は新京報の報道および海外の中国語報道で見ることができる。

 新型コロナウイルスがセンターから海鮮市場に流出した可能性があるのではないか、との見方を補強する材料もある。

 今年1月3日、吉林省の裁判所で、ある訴訟の判決が出た。それは中国工程院の特別研究員、中国農業大学生物学院教授の李寧氏らが汚職で起訴され、懲役12年の判決が下された。

 李氏らが国家最高レベルの生物学研究家であるが故に、判決の注目度が高いのは当然であるが、判決結果より判決文に書かれた内容に驚きのものがあった。

 中国政府系ネット「澎湃(ほうはい)」新聞網によると、判決文に書かれた罪の一つは動物の違法販売で、李氏たちは実験のあと、処分された動物や牛乳を市場に横流ししていたのだ。

 その金額はなんと1017万元(約1億5400万円)にも達した。彼の研究分野は動物の遺伝情報の研究だったことで、大量の動物を使って実験する必要があった。それで実験していらなくなった動物たちを市場に売りさばき、莫大(ばくだい)な利益を得たのだ。

 

コウモリは珍味?

 

 この事実を見るとセンターで管理されていた数百匹のコウモリを思い起こしてしまう。金額の巨大さや犯行が行われた長い期間から考えると、中国では研究者たちが実験動物を市場へ売りさばくのが常態ではないか、と推測できる。

 実際、新型コロナが武漢で発生後、海鮮市場で食用禁止の野生動物を売買するリストも数多く流出した。それと同時にコウモリを珍味として食べる映像も短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」をはじめ、さまざまなソーシャルメディアで現れた。

 一部の中国人が、武漢での新型コロナウイルスがコウモリから人に移り、そのウイルスを帯びたコウモリがセンターからどこかに売り出されたのではないかとみていたからだ。

 センターと海鮮市場との距離が近いだけに、コウモリが珍物として売られるのも容易なことだと受け止められたようだ。

 関係者の発言からも気になる話が出ている。1月6日、センター主任の李剛氏が「長江網」の取材で、武漢で初期に報告された肺炎の患者が海鮮市場と関係があると認めている。

 1月24日に武漢金銀潭医院副院長らが「ランセット」という著名な国際医学雑誌に掲載した論文にも、最初に入院した41人の患者のうち27人が「海鮮市場」に行ったと書いてあった。このため、中国政府が素早くその海鮮市場を封鎖し、センターとの関連をごまかそうとしたと考えることもできる。

 しかし、米国や、一部の国から中国政府の過ちでウイルスが広まったと、責任を追及する声が強くなるにつれ、これまで紹介してきた報道、写真や肖教授の論文までもが削除された。

 センターを一つの流出源と考えることは、あくまで推測の域を脱していないが、中国国内の報道などをみるにつけ、海外との共同調査などでセンターを検証する意義は十分にありそうだ。

【筆者】

中国ウオッチャー

龍 評(りゅう・ひょう)

 

(KyodoWeekly6月1日号から転載)

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