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コロナがもたらす習政権の危機 バスに乗った兵士の映像

 中国が新型コロナウイルスとの闘いで、やや落ち着いたとされる4月3日、ネット上にある映像が流れてきた。数台の白いバスに人民解放軍の兵士がびっしりと座り、北京へ向かっているという内容だった。しばらくすると、北京で大変なことが起こり、〝政変〟ではないか、と海外の専門家たちが分析を競ったという。

 

 一つの見方が、新型コロナ対策の失敗で、習近平(しゅう・きんぺい)・国家主席が反対勢力に職務をはく奪されたのではないかというもの。または、習氏が新型コロナ対策の失敗で問責され、中国共産党第20回大会で辞任を約束させられたなどなど。あらゆるうわさは、すべて習氏の失脚にかかわることだった。

 新型コロナは昨年12月末ごろも感染拡大中であったが、習政権は中国では最大の祭りである、春節の祝賀ムードを壊してはならないとの理由で情報を隠蔽(いんぺい)し、国民に知らせなかった。その結果、ウイルスがまん延し中国だけではなく、各国・地域にも犠牲と損害をもたらした。

 初期段階の失策で人々の命が失われていたにもかかわらず、習氏は春節の祝い行事を通常通り実施し、新年祝辞には「武漢」について一言も触れなかった。

 1月23日、武漢市が都市封鎖を宣言し、政府がある程度強力な政策を打ち出した。その後、こもっていた習氏がようやく、メディアに出てきた。同月28日、世界保健機関(WHO)事務局長と会見したとき、習氏は新型コロナ対策に関して「我一直是在親自指揮、親自部署(私が初めから自ら指揮し、自ら配置した)」と発言。この映像が流れると、世間は騒然となった。自ら指揮したにもかかわらず、感染拡大は約1カ月間も野放しにされ、大事な人々の命を奪ったとの声だった。

 人々の怒りは激しかった。武漢市の感染拡大が日増しに厳しくなったにもかかわらず、習氏は視察には行かなかった。これに不満を持っている民衆は、ある映像を拡散し続けた。それは2003年に胡錦涛(こ・きんとう)・前国家主席が、重症急性呼吸器症候群(SARS)が最も流行した地域、広州を視察する映像であった。批判があまりに激しかったためか、習氏は北京の住民地域を視察した。中国の人々がその行動にまた失望し、視察も不評に終わったようだ。(習氏は3月10日に武漢市を視察した)

 習政権による新型コロナの一連の対応に対し、中国の知識人の怒りが最高潮に達した。

 まず「裸になっても皇帝にこだわるピエロ」というタイトルの文章がネットや通信アプリ「微信(ウェイシン)」に現れ、広く拡散された。

 作者の任志強(にん・しきょう)氏は中国で最も有名な不動産王で、紅二代(毛沢東氏らと共産党革命に参加した長老らの子弟)の一員でもあり、王岐山(おう・きざん)・国家副主席との関係は密接だ。文章は習氏が皇帝の地位にこだわる姿勢を批判するだけではなく、自分の「偉大」な業績を宣伝し、新型コロナ感染の実情を隠した、とも指摘した。

 なぜ、1月3日に米国に報告したのに中国国民には事実を公表しなかったか。なぜ、その後も全国規模の集会を行わせたかなど、任氏は怒りをもって習氏に質問を突きつけた。怒りの背景には習氏の重要談話にある。

 2月23日に、習氏は17万人に視聴させるテレビ会議で談話を発表し、新型コロナに対する方針などを打ち出したが、責任逃れと自分をほめることに終始したのだった。任氏はその談話に対し、民衆の不満を代弁した。

 しかし、その後まもなく任氏が行方不明になった。友人らは「微信」で彼を探すように呼び掛けた。

 その後も、ある「提案書」がネット上にアップされ、世間を驚かせた。そこには、新型コロナの情勢が厳しくなったことで、緊急に中国共産党政治局拡大会議を開くよう呼び掛けるものだった。議題は習氏が引き続き中国国家主席、共産党の総書記および軍委主席を担当し、それが適任であるかどうかを明確にすべきだと力説していた。

 それゆえ、本文冒頭のうわさが流れてきたのだ。人民解放軍がバスに乗って北京に入るだけで、政変説になったことは、人心が変化を望んでいるからなのだろう。これに対し、習政権は、うわさを否定しようと動いた。

 4月3日に、習氏をはじめ中国政治局の7名委員プラス王岐山副主席一同がそろって植樹活動に現れた。人民日報をはじめ政府系マスコミがそれを大大的に報道し、中央政府の安定をアピールした。

 習政権はこのような形で指導部の団結を内外に見せ、政変説や習氏辞任説などを否定した。それに合わせたかのように、4月7日、北京市規律検査委員会は任氏が違法の疑いで取り調べを受けていると公表したのだ。共産党政権を維持するため、反習勢力と彼の支持派が互いに妥協したのであろう。

 習政権の内部でも意見は一致していなかったようだ。約2カ月間の間、チャイナ7の中で、習氏以外の6人はずっと沈黙したままなのだ。一連の出来事は習氏の権力を弱めさせたに違いない。それは李克強(り・こっきょう)首相が以前と比べ、マスコミの露出度が多くなったことからもうかがえる。

 では、白いバスに乗っていた人民解放軍の兵士たちは、なんのために北京に入ったのであろうか。筆者の情報源の一つによると、北京軍区の内部で新型コロナの感染者が多く発生したので、警備の補充だと言った。別の見方では、習氏は疑り深い人間なので、任氏の〝反旗〟に驚かされ、中南海の警備を自分が信頼できる部署に変えたからではないか、というものだ。

 現在、海外にいる民主活動家王丹(おう・たん)氏が「習近平が辞任、中国は変わるべきだ」という署名運動を展開し、新型コロナの真相調査を含め、五つの要求を打ち出している。多くの影響力のある著名人が既に署名をし、支持の輪が広がっている。

【筆者】

中国ウオッチャー

龍 評(りゅう・ひょう)

 

(KyodoWeekly5月4/11日号から転載)

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