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犯罪のグローバル化

 その一報を知った時、「やはり」という言葉が口をついて出そうになった。

 2月半ば、特殊詐欺に関与した疑いがあるとしてフィリピンで日本人の男8人が逮捕された事件である。

 フィリピン入国管理局の調べによると、男8人はいずれも20代前半~30代で、退職した日本人高齢者を標的に、フィリピンから電話を掛ける特殊詐欺に関与した疑い。3年間にわたり、総額数百万ペソ(1ペソ=約2・17円)をだまし取っていたという。

 8人が「かけ子」(電話をかけてだます役)の拠点にしていた場所は、首都マニラから車で数時間のラグナ州ファミー町にあるリゾート施設だった。

 現地のテレビ報道によると、緑に囲まれたリゾート施設には、屋外プールが備えられていた。その側に建つ、赤い屋根の平屋が犯行現場だった。テレビ局の取材班が、フィリピンの治安当局とともに施設に突入し、8人を一斉に取り押さえるという緊迫した場面が映像で流れている。

 「手を頭の上に乗せろ!」

 捜査員の怒号に、8人が従い、床に座らされた。室内からは、黒い電話機約10台、特殊詐欺のマニュアルとみられる書類などが押収された。壁には「焦(あせ)らない」「イライラしない」などの注意書きが、ノートパソコンには「金(かね)の為(ため)」と書かれた付箋と5円玉が貼り付けられ、現場の生々しさが伝わってきた。

 私が「やはり」と思ったのは、すでに昨年11月、マニラのホテルを拠点に、日本人の男36人が特殊詐欺に関与したとして逮捕されていたからだ。これは恐らく氷山の一角だろうと思っていたところ、今回の事件が起きた。

 昨年3月には、タイ中部パタヤの高級住宅街でも日本人の男15人が同容疑で逮捕された。しかも、フィリピン中部のセブ島にも拠点があったという。

 犯行グループはなぜ、東南アジアを拠点に選んだのか。

 まず考えられるのは、通信費を含めた物価の安さだ。以前、タイの首都バンコクに進出した日本のコールセンター企業を取材した際、進出の理由として企業の担当者は、「通信費が日本に比べて3分の1程度で済む」と説明していた。犯行グループも経費削減のため、日本から地理的にも近いフィリピンやタイに拠点を移した可能性が高い。

 

日本人だけではない

 

 もっとも、これは日本人の犯行グループに限ったことではない。フィリピンでは2018年11月、米国人やカナダ人ら外国人8人がフィリピン人と共謀し、高齢者を標的にした投資詐欺に関与したとして逮捕された。

 この翌年9月にはフィリピン中部パラワン島で、中国人約600人がネットの投資詐欺に関与した疑いで逮捕された。

 「グローバル化」という言葉を耳にするようになって久しい。国家という垣根を越えた、地球規模での資本や情報のやり取りを意味するが、かけ子の相次ぐ逮捕はまさしく、犯罪のグローバル化を象徴している。

ノンフィクションライター 水谷 竹秀

 

(KyodoWeekly3月9日号から転載)

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