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比人が動かしていたクルーズ船

 横浜港に停泊中で新型コロナウイルスの感染が広がっているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗員乗客約3700人のうち、538人がフィリピン人だった。うち乗客は7人だけで残り531人は船員のほか船内の清掃係、ウエートレスなどのサービス・スタッフだ。

 同胞の数が多いため、フィリピンの新聞やテレビも連日、ダイヤモンド・プリンセスに関する報道が続いている。フィリピン保健省の2月19日までの発表では、フィリピン人のうち41人の感染が確認され、日本の病院で手当てを受けているという。

 フィリピン政府も米国などにならい、同船の自国民を帰国させるため、23日にチャーター便を派遣することを決めたが、人数が多いため、帰国後の一時隔離施設をどこにするかなどをめぐり、省庁間の調整がなお続いている。フィリピン政府は、感染地からの帰国者全員を帰国後2週間施設に隔離する方針をとっている。

 日本船主協会によると、世界の商船で船員として働く人は約120万人。うち、国・地域別ではフィリピン人の約23万人が最も多く、2番目に多いインドネシア人と中国人の約8万人を大きく引き離している。

 この数は航海士、機関士ら船の操舵(そうだ)に関わる船員の数で、クルーズ船など客船のサービス要員として世界の海で働くフィリピン人はさらに約10万人いる。

 約4千隻の外航商船を持つ海運国・日本の外航船員数は1970年代には約6万人いたが、現在は2千人ほどまでに減っているのに対し、フィリピン人船員数は増え続けている。

 その最大の理由は、フィリピン人の平均的英語力が高く、英語が共通語となっている海上交信や操舵技術の習得が早いためだろう。日本と同様に海に囲まれた国土に暮らし、海洋に親和性を持っていることも理由の一つと思われる。

 家族持ちの船員は、半年、1年と家族と別れて暮らすことを強いられるが、その給与水準はフィリピン国内の他の仕事より10倍以上高く、海外出稼ぎ者の中でもエリート層に属する。

 その需要は年々高まる一方で、フィリピン国内には船員養成学校が多数ある。かつてフィリピンで船員は、貧困層の仕事とみられてきたが、現在は給与水準が上がり、中間層から富裕層の安定した仕事とみなされるようにもなっている。

 ダイヤモンド・プリンセス号への注目によって、世界を巡る船の多くは、今やエリート・フィリピン人が動かしているという事実があらためて知らしめられたともいえる。

日刊まにら新聞編集長 石山 永一郎

 

(KyodoWeekly3月2日号から転載)

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