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ジレンマに陥った習政権 香港民主派、選挙大勝利

 香港区議会選挙は〝民主派〟が大勝という結果に終わった。香港でのデモが続く中、選挙そのものの実施への是非に注目が集まっていたが、中国政府には「延期」という選択もあった。しかし、中国ウオッチャーの龍評氏によると、誤った選挙情勢報告があげられ、習政権が判断を間違ったと指摘。今回の選挙結果で、大きなジレンマに陥ったと、分析した。(編集部)

 

 11月下旬の香港区議会(地方議会、18区で直接投票枠452議席)の結果は、民主派が8割超の議席を獲得した。一方、親中派といわれる〝建制派〟は292議席から59議席に減った。投票率は70%を超え、これまでにない高さを記録した。この結果を受け、いつも率先して中国政府の代弁者を演じる某紙の幹部はため息しか出なかった。政府系マスコミ各社が新華社の配信原稿を引用し、選挙が終わった、と報じただけだった。

 11月25日、中国外務省のスポークスマンも選挙結果に触れず、香港の林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官を支持する、とだけ述べた。

 中国政府内の戸惑いは隠せない。今回の香港での選挙は必ず、親中派が勝つと判断していたからだ。民主派議員の数は増えると予測していたが、親中派義員には簡単に勝てないだろうと見ていた。

 香港デモ以来、中国マスコミは、親中派や親中の香港人たちの行動ばかりを取り上げている。多くの香港人が、中国政府のデモ取り締まりを支持するかのようなイメージをつくった。

 特に香港の武勇派が一般市民に火をつけた事件や、親中派議員が攻撃を受けてけがをしたなどの事件以来、警察の取り締まりが一層、暴力的になった。香港への中国本土からの旅行客が、劇的に減少したことも中国政府の自信を深めさせた。

 中国政府は、さまざまな方法で区議会選挙を延期させることができたはずだ。しかし、現実は違った。

 冷静に考えれば、中国政府が「そう簡単に判断を間違えるはずがない」、とみんながそう思うだろうが、独裁体制の弊害が今回、出たようだ。

 筆者の知人の話によると、中国政府は確かに独自のルートと方法で、香港の情報を入手していたという。

 中国広東省新圳市に紫荊山荘という高級別荘がある。香港に近いとのことで、中国政府に直属する情報センターにされた。香港の警察幹部や親中派のビジネス界要人などが頻繁に往来している。中国の最高指導部内で香港政策を担当する韓正副首相(共産党政治局常務委員)や、国務院香港マカオ事務所の幹部も訪ねたことがある。習近平国家主席も毎日、この別荘からの情報を目に通したという。

 しかし、ここにやってくる人たちはすべて親中派だけであり、彼らは独裁を恐れて、こびることしか考えておらず、香港の〝真実〟を言えるはずがなかった。

 だから、この別荘から上がった情報は、香港の現実とかなり離れていた。その上、習氏が個人崇拝を好み、性格的にも反対意見を許せないので、本当のことが言える部下もいなかった。同じような状況は中国歴史上にもあった。かつての清国政府が8カ国連合軍と戦うとき、負けたにもかかわらず、大臣たちは西太后を喜ばせるために勝ったと偽りの報告をし続けた。毛沢東(もう・たくとう)時代にも同じような手法で、地方幹部とマスコミがにせの繁栄をつくり出した。

 今度の香港問題でも習政権は、保身に走る自分たちの御用マスコミや、幹部たちによりだまされ続けたのであろう。

 第19期中央委員会第4回総会(4中総会)のあと、習氏の向心力が明らかに衰えたように見えた。さまざまな国内外の会議で彼の発言が権力の最盛期より、かなり短くなった。常に口にしていた「中国の夢」は「世界の人々とともに人類共同体の構築」に変わった。

 彼の権力が挑戦を受けた象徴的な出来事は、中国政府の機密文書が漏えいした事件であろう。日本のマスコミも取り上げたが、それは新疆ウイグル自治区の強制収容所運営に関する機密文書である。体制内で地位の高い人が、習氏の権力を動揺させるために、そのような機密度の高い文書を漏れさせたに違いない。

 多くの中国政治専門家は、中国政府が集団指導体制に少しは戻った、と分析している。習氏による絶対独裁ができなくなったとも見ている。つまり、個人崇拝に腐心した習氏の威信は失墜しつつあるのではないか。

 香港問題をはじめ、米中貿易摩擦に見られるように対米関係の失策、さらに中国経済の減速などで、習氏が長老たちに問責されたともいわれている。

 香港問題が示したように、さまざまな分野で習政権の危機管理能力の不足が露呈された。上層部だけではなく、国民の人気も失いつつある。

 中国共産党中央規律検査委員会が公表したデータによると、習政権の反腐敗から2017年までの間に、すでに153万人が処分された。この人々および家族の不満も大きい。

 香港の人々と同様に、これらの人々が健全な法律に守られず、ある日突然、同委員会が談話を公表し、そのまま刑をくだされたからだ。しかも刑期中にも家族との面会は許されない人々も多くいる。香港の人々の習政権に対する恐怖も理解できる。

 中国政府にとっては香港をもっとコントロールしたい。香港の人々はそれを受け入れられない。習氏が歴史の車輪をバックさせることをやめて、国際社会が認める真の政治改革をしない限り、香港問題で陥ったジレンマも解消されないであろう。

 [筆者]

中国ウオッチャー

龍 評(リュウ・ヒョウ)

 

(KyodoWeekly12月16日号から転載)

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