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BTSより理工系が恩恵

 韓国では徴兵制が敷かれているために、男の若者は青春のど真ん中で軍隊に入らなければならない。このため、兵役義務がどうなるかは社会的関心事だ。社会的に恵まれた階層の子どもが兵役を逃れる不平等が大きな問題になってきた。

 兵役期間は昔から比べると少しずつ短くなり、現在、陸軍の場合は18~21カ月だ。しかし、韓国は世界でもトップクラスの少子化現象が起きており、軍へ入隊する人材が不足する事態に直面しつつある。

 韓国では、特例として軍隊に入隊する代わりに認められた「代替服務要員」という制度がある。代替服務の場合は、服務期間は36カ月。韓国政府は少子化に伴う現役兵の不足を補うために、この「代替服務要員」の規模を縮小していくことを検討してきた。

 韓国のスポーツ選手は、オリンピックでのメダリストやアジア大会優勝者などは、兵役に就かずこの「代替服務制度」の恩恵を受けることができる。また、国際芸術コンクール2位以上、国内芸術コンクール1位の入賞者も芸術要員として認められる。これらスポーツ・芸術要員は、4週間の基礎軍事訓練を受けた後、一定の特技奉仕活動があるものの、軍生活を免除され、民間で活動を続けることができる。

 韓国の男性音楽グループ「BTS」(防弾少年団)は、世界的な人気を得て、膨大な外貨を獲得するなど国に大きく貢献している。このため、ファンや芸能界から功績を勘案して、代替服務制度の恩恵を受けることができるようにすべきだという主張が出ていた。

 韓国政府は11月21日、李洛淵(イ・ナギョン)首相の主宰で国防省や科学技術情報通信省、教育省など関係省庁が集まり「兵役代替服務制度改善計画」を審議した。

 この審議に大きく影響を与えたのが日本の韓国への輸出規制強化だった。安倍政権は7月に半導体の製造に使う「フッ化水素」など3品目の輸出規制強化に踏み切った。韓国では主力産業である半導体生産を狙った措置だと反発が強まった。韓国政府は素材、部品、設備の開発に毎年1兆ウォン(約920億円)を集中投資することを決めるなど同部門への強化方針を打ち出した。

 韓国政府は代替服務要員を大幅に削減する方針だったが、安倍政権の輸出規制強化もあり、産業部門の枠を7500人から6200人に削減する程度にとどめた。

 理工系の博士課程専門要員は現行の1千人を維持し、服務期間として認める博士学位期間を3年から2年に削減し、削減した1年は学位取得後に国内企業や研究所で服務することにした。これまでは、3年の博士課程が終わると海外留学に出るケースが多かったために、国内での研究に誘導するようにしたのだ。

 修士課程専門要員は、1500人を1200人に削減するが、緊急性が要求される素材、部品、設備関連分野の中小、中堅企業に配備する人数を増やす方針だ。さらに、これまでは服務後に大企業に行くケースが多かったが、大企業への転職を禁じた。

 BTSなどの大衆音楽分野はクラシック音楽のように客観的な基準がなく、映画など他の分野との公平性を考慮して兵役特例を与えないとした。このため、BTSメンバーも軍隊へ行かなければならなくなった。BTSは泣き、安倍政権の輸出規制強化で、素材、部品、設備関連の理工系の若者は恩恵を受ける結果となった。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly12月9日号から転載)

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