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「ソルリさんの死」の問い掛け

 韓国のガールズグループ「f(x)」(エフエックス)の元メンバーで歌手兼俳優のソルリさん(25)が10月14日、ソウル近郊の自宅で、遺体で発見された。マネジャーが自宅で発見し警察に通報した。警察は、事件性はなく自殺とみている。

 ソルリさんの自殺の原因はまだ明らかではないが、ネット上での悪質な書き込みが原因ではないかという見方が指摘されており、韓国社会に大きな衝撃を与えている。

 ソルリさんは2005年に子役でデビュー、09年にf(x)のメンバーとして歌手として活躍し、その後女優としても活動の幅を広げた。

 しかし、14年にネット上の悪質な書き込みによる苦痛を訴えて一時、芸能活動を中断した。翌15年8月にf(x)を脱退し、女優に専念するとした。

 彼女は大衆文化の中で消費されるアイドルではなく、自己主張する女性だった。「ブラジャーは健康によくない」とノーブラの自撮り写真を投稿したり、今年4月に憲法裁判所が堕胎罪違憲判断を出すと「栄光の日」と支持発言をしたりした。

 大衆が要求する従順な女性アイドルではなく、自分自身の個性を出そうとした女性だった。それがネット上での攻撃の対象になった。

 彼女の死で、不確かな情報やゴシップを書くメディア、そのメディアの記事をネタに悪意に満ちた書き込みをするユーザーの共生関係を批判する声も高まった。彼女の死は、この無責任なメディアと悪質ユーザーの共犯関係が生み出した悲劇だという指摘だ。

 

人ごとではない

 

 韓国芸能界の主要プロダクションが参加する韓国演芸マネジメント協会は10月16日に「悪質な書き込み根絶」を訴える声明を発表した。

 韓国の労働運動のナショナルセンターである全国民主労働組合総連盟(民主労総)も同じ日に、ソルリさんを「女性嫌悪に立ち向かって戦ってきた若い女性たちの同志だった」とした上で、「私たちはソルリの勇気ある姿を応援したが、痛みを分かち合うことができなかった」と声明を出し、遺憾の意を表明した。

 芸能人の死について労働運動のナショナルセンターが声明を出すのも異例だ。

 韓国では、ソルリさんの死をきっかけにネット上の悪質な書き込みに対する批判が高まり「インターネット書き込み実名制」を求める声が高まっている。世論調査会社「リアルメーター」が10月16日に実施した世論調査では69・5%が実名制の導入に賛成した。

 韓国では悪意のある書き込み防止のために07年に実名制が導入されたが、表現の自由やフェイスブックやツイッターといった海外のSNS(会員制交流サイト)に適用できないなどの理由で、憲法裁判所が12年に実名制に違憲判断を下している。

 しかし、ソルリさんの今回の死をきっかけに、再び実名制を求める声や、悪質書き込み禁止法や差別禁止法など、制度的な対応を求める声が高まっている。日本も人ごとではない。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly11月4日号から転載)

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