
ダウ平均株価と米国上場企業数
(注1)米国企業数のデータはセントルイス連銀HP、日本企業数は東証HPより引用
(注2)日米データの期間の差異はデータ元の更新状況の制約によるもの
(注3)日経平均株価及びダウ平均株価は日経Needs Financial Questより引用
日経平均株価は1990年1月4日および2018年1月4日、ダウ平均株価は2016年1月4日の終値
米中貿易摩擦激化による世界経済の先行き不透明感の高まりを背景に、米国では7月末に約10年ぶりに利下げを行った。8月もジャクソンホール会議における、パウエル議長の追加利下げに前向きな発言に伴い、世界は再び、金融緩和局面へかじを切りつつある。
こうした中、米国の金融市場では、景気後退入りのシグナルを示すとされる、長短金利の逆転が発生するなど、株価の値動きは荒くなっており、下落するのではないかとの懸念もささやかれている。
さて、本稿ではこの株価を、常識から少々外れて考察したい。
一般的に投資家は配当あるいは将来的な株価の値上がりを目的に株式投資を行う。
故に投資家は決算に最も注視するので、株価を予測する上では企業業績を見極める事が重要とされる。
しかし、ここで盲点となっていることがある。教科書的な株式投資理論は、時間の変化を考慮しないため、企業数が一定であることを所与としている点である。
日経平均株価は東証1部上場銘柄より225社を選定したものだ。日経平均株価が約4万円をつけた1990年1月の上場企業数は1752社であった。
これが2018年には日経平均株価は、2万円台前半とかつての半値程度であるにも関わらず、3655社まで増加している。
一方、米国の動きは日本と相反する結果となっている。
米国株は1996年頃より、足元まで3倍以上となっている。それとは対照的に上場企業数は約半減している。この背景には、米国企業がグローバリゼーションを背景に資金調達が容易となり、株式非公開化のメリットが増加している点などが指摘されている。
足元、7月にダウ平均株価が過去最高値を更新した最大の要因が、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げであることに疑いはない。
しかし、上場企業数が減少する中、リーマン・ショック後に実施されたFRBの「非伝統的金融政策」によって、世の中に出回る資金量が急拡大すれば、当然1社当たりに投資されるお金の量が増えるので、株価は上がりやすくなる。この前提に立てば、既に当時の水準より3倍以上まで上昇した米国株こそ、バブルと警鐘を鳴らす声にも妥当性があると思われる。
日銀も7月の金融政策決定会合にて緩和拡大姿勢を示すなど、FRB追従の動きを見せている。だが、長期的な視点に立った際、足元で東京証券取引所が進める上場基準見直しは東証1部企業の数を減らす可能性があるため、「株価下支え政策」としては有効かもしれない。
(アジア太平洋研究所調査役 中山 健悟)
(KyodoWeekly9月2日号から転載)