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パキスタンでの非合法な嫁探し

 長年の一人っ子政策の影響で、嫁不足に悩む中国の男性にパキスタンの若い女性をあっせんする仲介業者の活動が昨年ごろから活発化しているようだ。

 嫁探しの対象になっているのは、国民のほとんどがイスラム教徒が占めるパキスタンで、比較的コミュニティーの抵抗が少ない少数派である、キリスト教徒の若い女性たちだ。だが、実際はブローカーを介した人身売買的な側面が大きい、とパキスタン人権擁護団体などが強い懸念を示している。

 数年前から中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の進展に伴い、多くの中国人が労働者として海外に働きに出て、中国国内の嫁不足を補う形で、現地の女性を嫁に求める傾向は強まっていた。

 人権擁護団体の関係者によると、最初は民族的に近いとされるベトナム、ラオス、北朝鮮などが対象とされ、仲介業者が暗躍していたが、各国の政府当局が人身売買的な活動に対する監視の目を強化したため、民族的にはかなり違うパキスタンにも進出したという。

 パキスタンの人権活動家で自身がキリスト教徒のサリーム・イクバル氏は「パキスタンのキリスト教徒の少女を狙ったブローカーの暗躍が始まったのは昨年10月ごろだ」とした上で「それ以降、750人から1千人の少女が業者仲介で中国人男性のもとに渡ったとみられる」と指摘する。

 人口約2億人の大半をイスラム教徒が占めるパキスタンで、キリスト教徒はわずか約300万人で、ほとんど注目を浴びない少数派だ。大部分が中部パンジャブ州の大都市周辺の小さい集落に固まって住んでいる。そして生活水準は他教徒に比べて極めて低い。

 「金に余裕のある中国人が、貧しい両親に若い娘の身売りを持ち掛け、子どもを連れて行く人身売買の構図が大きく見える」とパンジャブ州人権・少数民族担当相を務めるイジャズ・アラム氏は語る。「問題は子どもの人権が無視されたどん欲さが根底にあるから、もはや看過できない」

 

聖職者に賄賂も

 

 実際、仲介業者は嫁を求める中国人男性本人も伴って、礼拝中の教会にまで押しかけてきて、対象女性への接触を試みる執拗(しつよう)さだ。

 そして、もっと問題なのは「牧師など聖職者の中に賄賂を受け取って中国人側に女性を紹介する者がいることだ」と、ベトナム女性の中国人男性への非合法あっせん問題に対処したアジアの人権活動団体「パシフィック・リンクス」のミミ・ブー広報代表は明らかにした。

 「ほとんどは中国人側が数千米ドルの謝礼を、少女の両親など関係者に支払い、中国に連れて行くが、適応できずに悲惨な生活を送り、逃げ帰ってきた少女もかなりいる」(ブー代表)という。

 16歳の時、自宅を訪れた中国人男性と結婚するよう両親から説得された少女は渋々、従って中国に渡ったが、5カ月足らずでパキスタンに戻った。妊娠していたが、夫の暴力などに耐えかねて、中国から逃げ帰ったケースなどを紹介してくれた。

 国際人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」も今年4月下旬に「中国でパキスタン女性が性奴隷の危機にさらされている」と懸念の声明を発表した。パキスタン当局も5月初め、パンジャブ州での嫁探しの非合法な活動についにメスを入れ、中国人8人とパキスタン人4人を逮捕した。

フリージャーナリスト 須田 浩康

 

(KyodoWeekly7月29日号から転載)


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