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ここまで来た中国の監視社会 デジタル技術フル活用

 6月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせ、米中両首脳が会談。米国が中国に対し、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に米企業が製品を売ることを認める意向を示した。そのファーウェイなどの最先端デジタル技術が、中国国内の治安を守る監視システムに応用されているという。監視社会の行き過ぎを懸念する、中国ウオッチャーが現状を報告する。(編集部)

 

 中国湖北省武漢市に世にも知られる南湖公園があり、少し前に訪れた。公園の中には南湖という湖があり、周囲は森が多い。環境がよいことから、故・毛沢東主席が時々訪ね、その湖で泳ぐことは有名であった。今は習近平国家主席も毛氏のように愛用し、よくひそかに滞在するという。

 湖から少し離れると、大きな森があって、散歩道沿いの大きな杉の幹に数え切れないほど〝鳥の巣〟があった。筆者は指でさしながら「かわいいね」と友人に言った。携帯カメラを向けようとしたところに、友人が顔を近づけ、小さな声で「ばかだね、それは監視カメラだよ」と教えてくれた。

 一瞬、体が凍りついた。そう言われてすぐ異常に気付いた。私たちが歩いた道にはほぼ、5メートルぐらいの間隔で、監視カメラが設置されていた。

 こんな〝鳥の巣〟なんてありえない。監視されていると思うとぞっとした。そして、友人は私たちから約20メートル離れた先にいた男性について、「私服の警官だ」とこっそり教えてくれた。

 中国の街を歩くと、監視カメラの多さが目につくだろう。中国政府所属の「楚天都市報」の報道によると、武漢市の監視カメラの数は、2018年6月までに100万台にも達しているという。19年6月までに4万4千台増えるという。

 武漢市以外の市も同じのような状況で、全国的な監視網が形成されている。その全国的な監視網は「天網」と命名され、天網に配置された監視カメラは「天眼」となり、人々の日常生活に溶け込んでいる。

 中国政府は、そのようなシステムについて「天網」、あるいは「天眼監視」として報道させ、頻繁にマスコミに取り上げさせている。

 それらの報道によると、犯罪の予防と犯人に打撃を与えるために、都市のあらゆるビルの高いところに、高画素の監視カメラを設置し、ネットを通して街や広場などを監視できるようにした。

 また、自動識別と検索機能も備えられている。つまり、人工知能化したのだ。

 昨年、日本でも話題になったが、コンサートを見に行った逃亡犯が現れると、すぐ「天眼」に捉えられ、「天網」によって識別され、たちまち逮捕された。中国「華西都市報」の報道によると、中国の顔識別システムはすでに8割の大きな空港で機能しているという。

 今年4月中旬、北京大学の学生は母親を殺した罪で約1年あまり逃亡した末、重慶の空港に現れ、その約10分後に捕まえられた。「天眼」が識別し、通報したのだ。報道によると、その「天眼」システムが備えている顔識別機能は、極めて短い時間で全国民の顔情報に照合ができ、目的の人物が特定できるようになっているという。

 また、このような顔識別システムはすでに住宅地に導入されており、知らない人が団地内に入ると、すぐに当局に知らせが行き、もしその人が捜査している容疑者であれば、数秒のうちに警報を鳴らせることができる。

 「天眼」監視システムは今後、さらに精度を高め、網膜認証も導入すると、米ニューヨーク・タイムズ中国版も中国監視社会について報じていた。

 それによると、17年の時点で、中国には全国各所に約1億7600万台の監視カメラが設置されているという。中国政府が公表した公文書にも20年までに「天網」は全国各地をカバーする上に、1人ずつ監視できるようにネット情報の共有、場所を問わずに随時対応できるようにする目標を掲げている。

 あまりに急進した計画である故に、監視カメラがあふれ、他人のプライバシー暴露に乱用される事件も頻発した。中国はもはやプライバシーはあるようでない時代に突入したのかもしれない。

 それを証明するかのように怖くてホテルの部屋や借りた家でも眠れそうにないケースが多発している。「天眼」監視システムは犯罪を抑制することが目的とされているが、本当のところは、国民の監視に使われていることは明白ではないだろうか。

 中国の「天眼」システムには、高品質の監視カメラと複雑なソフトが必要である。その技術を提供できるのは米国にたたかれている、ファーウェイをはじめ、中国政府に関係の深い軍事産業や技術会社である。

 中国の「中関村在線」網の報道によると、ファーウェイは都市、鉄道交通、政府機関に対して、それぞれのニーズに合った監視ソリューションを提供できるという。同社はソフト面だけではなく、監視カメラも製造している。中国「安防網」も「ファーウェイがIPC6621型高速球状カメラで天眼監視を構築」という報道をしている。さらに、少し前からファーウェイが「天網」システム構築の主力だとも伝えている。

 これらの記事を読む限り、ファーウェイ創業者・任正非(にん・せいひ)最高経営責任者がわざわざマスコミを呼び、自分の会社は「中国政府とは関係がない」ということを強調したが、信じがたいと言わざるを得ない。

(中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly7月29日号から転載)


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