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現地・市場のニーズに合わせる アフリカ農村を歩いて

 「国際農研」ってご存じですか。正式名称は、「国立研究開発法人国際農林水産業研究センター」(茨城県つくば市)。この組織の目標は「世界から貧困をなくすこと。そのために世界中に食料を行き渡らせること」などを掲げる。本稿では、開発途上地域など調査をしている研究員の活動を紹介する。2回目は、アフリカの大地で農業開発研究に取り組む飯山みゆきさんが登場する。(編集部)

 

 はじめまして。国際農研研究戦略室の、飯山です。

 アフリカというと、日本から遠く、皆さんにとって、そこでの生活は想像しがたいのではないでしょうか。東アフリカに限れば、野生動物や貧困など極端なイメージが先行してしまうかもしれません。

 野生動物に関しては、基本的に国立公園・保護区にいるのですが、調査地へ向かう途中でもたまに遭遇しますし、ケニアの首都ナイロビ中心部にライオンやサイが迷い込んでニュースになることもあります。

 ナイロビなどの都会では、近年拡大が著しく、ショッピングモールや高級ホテルが次々開業されており、それらだけを見ると、国際農研のあるつくばよりも都会?!と錯覚します。都市部成長に影響され、農村社会制度も変容しつつあります。

 しかし農村社会制度は、気候変動による干ばつの頻発や雨季の遅れによる不作、また資源劣化による農業生産の低迷などに、慢性的に対応しきれていません。収入・資産の不安定な農村から都市へ人々が移動する一方、都市における雇用機会・インフラ増強などの供給面が追いつかず、社会格差が目に見えて悪化しています。

 今日、グローバル化で世界的にテロ・移民問題への対応が課題化しつつある中、アフリカにおける貧困削減と社会問題への対応として、農村部門への農業技術・社会制度支援が依然として必要とされています。

 

最新技術が使えない?

 

 途上国農業の生産性を改善するための技術は進歩しています。

 しかし、アジア・ラテンアメリカに比べて、アフリカでは革新的農業技術の受容度が低いといわれてきました。アフリカでは技術に対する人々の行動原理がまったく異なるのでしょうか?

 私の専門はもともと開発経済学なのですが、アフリカ研究生活において、環境・社会制度と技術のマッチングについて考察することが多くなりました。

 例えば、東アフリカでは、小規模農家は1~2ヘクタール程度の農地を持ち、自家消費するための食料と商品作物栽培と家畜飼育、また炭焼きや日雇い労働などに従事しています。

 そんな中、2007~08年ごろ、バイオ燃料ブームが起こりました。ブームをけん引した人々はバイオ燃料作物の栽培が農村開発・貧困削減に貢献するとうたい、仲介者はバイオ燃料作物を「もうかる作物」と紹介し、種を1キロ当たり250~1千円(バイオディーゼルに換算すると1リットル当たり1千~4千円)で農民に売りつけました。

 この価格を受け、食料作物栽培と家畜飼育を放棄しても、バイオ燃料作物に集中したいと考えた農家もいました。実際には、ディーゼルが1リットル100円程度でしたから、バイオ燃料として競合するためには農民の受け取る価格は種1キロ当たり25円以下の必要がありました。

 さらに、栽培技術が確立されておらず、多くの農民は木1本当たり1~3キロの種の収穫も得られない状況で、経営的に成り立ちませんでした。結果として非現実的なバブルはすぐに崩壊し、ブームに踊らされた農民の後悔だけが残りました。

 他方、舗装道路や電気などの公共サービスが全くない農村でも、今や携帯電話を持たない農家はいません。都市へ出稼ぎに行った親戚との連絡だけでなく、送金も携帯で行われるからです。

 要は、現地・市場の事情を無視した開発は失敗し、逆に、現地・市場のニーズに見合えば、アフリカ農村でも技術受容、社会変革の可能性はあるのです。

 東アフリカはグレートリフトバレー(アフリカ大地溝帯)の存在から標高差に富み、サバンナから高原地域まで多様な生態系環境を抱えています。

 植生、生産される作物や飼育される家畜、そしてそれらの経営方法、受容される技術もさまざまです。技術開発を行う研究者や現地開発関係者が直面する各地域における技術受容上の制約を「特殊だから」と片付けるのではなく、共通の概念を駆使して「翻訳」し、解決策を提示することが、社会経済研究の役割の一つだと考えています。

 

日本の若者も挑戦を

 

 アフリカ農村開発は課題が多い分、やりがいがあり、国際共同研究では、アフリカ・海外の若手研究者が協力して問題解決に取り組んでいます。

 日本の若者である皆さんにもぜひ、アフリカ農村開発問題へ挑戦する意欲を持っていただきたいです。そのために、もっと身近にアフリカを知ってもらうべく、情報発信を行っていきたいと考えています。

[筆者略歴]

国際農林水産業研究センター研究戦略室室長

飯山 みゆき

1972年東京生まれ、東京大学大学院博士課程修了。今年3月まで研究戦略室研究コーディネーター

 

(KyodoWeekly7月29日号から転載)


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