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対立を生むもの―探れないか〝和解〟の道

 韓国の徴用工問題が混迷を深める中で、日本政府は韓国への輸出手続きを改定し、規制強化を明らかにした。そのため、この措置が報復ではないか、との議論が巻き起こっている。

 安全保障上の理由で、それまでの包括的な輸出許可から方針転換するためには、相手国が同盟国とはいえないと判断する理由が必要だろう。一説にはウラン濃縮にも使われる可能性があるフッ化水素が北朝鮮に横流しされている可能性があるというのが、それに当たるらしい。疑いがあるというのは、それなりに筋は通るが、報復措置ととられかねない内容だから、タイミングは悪すぎないか。日本政府が正当だと言いつのっても、外交的には拙劣さを否めない。

 徴用工の賠償請求権について日本政府は、1992年3月の予算委員会において外務省の柳井俊二条約局長が「請求権の放棄ということの意味は外交保護権の放棄であるから、個人の当事者が裁判所に提訴する地位まで否定するものではない」と答弁していた。つまり、日本政府は30年近く前までは個人の請求権は失われていないとの立場だった。これが韓国での賠償請求の動きを促したともいわれる。

 ところが、この動きが活発になると日本政府は手のひらを返したように問題は解決済みと言い始め、門前払いを決め込むことになった。日本が請求権に関する解釈を変更したことは、どう説明されるのか。

 しかも、2007年の最高裁判決(中国人慰安婦賠償問題)は、司法上の救済を否定して政府の新解釈に配慮する一方で、被害者救済に向けた関係者の自発的努力を促した。請求を受けた西松建設はこれに応じて、被害者に対する謝罪と賠償を行った。

 被害者の救済を促したこの判決は、残念ながらその後の日本政府の対応には踏襲されていない。だから、日本は条約の法的解釈でも、実質的な被害者救済でも態度を変えた。こんな一貫性のないことでは、国際社会で信用されるのだろうか。

 韓国側は不安定な国内政治情勢の下で世論に押されて反発を強めている。しかし、国の建前と建前がぶつかり合ったら、水掛け論になって事態の悪化を防ぐことは難しい。

 韓国政府の立場に配慮する必要はないが、徴用工問題については、被害者の救済も大事だという司法の判断を尊重して、被害者に向き合い、その前例にそって考えてみたらどうか。

 対米、対露の外交が何の成果もあげていない中で、参院選前に外交面で点数を稼ぎたかったのかもしれない。トランプ米大統領には過剰とも思えるおもてなしをする安倍晋三首相が、ハンセン病訴訟で示したような「異例の決断」で〝和解〟の道を探ることはできないものだろうか。隣国と角突き合わせていても、豊かな未来は訪れない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly7月22日号から転載)


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