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コンビニが照らすアジアの夜

 ひと昔前の東南アジアは、首都でも暗闇がまだそこかしこにあった。

 強烈な記憶は1985年に初めて訪れたビルマ(現ミャンマー)の首都ラングーン(現ヤンゴン)だ。ミャンマーは当時、鎖国状態で、外国人が宿泊を許されているホテルは首都に2、3軒しかなかった。泊まったホテルは繁華街の中心にあるそのうちの一つだったが、ホテル周辺だけがうっすらと明るく、一歩脇の路地に入ると手探りで歩かざるを得ないような漆黒(しっこく)の闇に包まれていた。

 そういう暗闇は90年代以降もラオスのビエンチャン、カンボジアのプノンペンなどにたくさんあった。タイのバンコク、フィリピンのマニラのような巨大都市にも街灯がない真っ暗な道はまだ多かった。

 しかし、今や東南アジアの都市はどこも各段に明るくなった。そこには、日系のコンビニエンスストア進出がかなり影響しているようだ。

 東南アジアの中でも最近のフィリピンにおけるコンビニ急増が特に際立っている。最大手セブン―イレブンの店舗数は年15%ほどの勢いで増えており、年内に全国で3千を超す見込みだ。

 マニラの主な繁華街には、既に東京都内並みの密度でコンビニが立ち並ぶ。店員の対応もまずまずだ。残念なのは弁当やサンドイッチなど日本では主力商品であるはずの軽食の品ぞろえが薄いことだが、最近はそれも少しずつ増えている。

 日本のコンビニとの違いは、ほぼ必ず店内に客が座る椅子とテーブルがあることだ。深夜には飲み物を一つだけ買い、うとうとと夜明かしをたくらむ客も多いが、店員も大目に見ている。

 コンビニの明かりは、夜の街を歩く者に安心感を与える。マニラのコンビニには24時間、銃を持った警備員も常駐しており、万一、路上犯罪に巻き込まれそうになっても、ここに逃げ込めばなんとかなりそうな気がする。

 ドゥテルテ政権下のフィリピンでは、治安が急速に改善しつつある。その背景には容疑者の「超法規的殺人」を巡って国際的な批判を浴びつつも、現政権が徹底して取り組む麻薬撲滅政策の効果が大きいとしばしば説明されるが、コンビニ急増もかなり貢献しているように思われる。

 日本では人手不足などに悩むコンビニ店主の組合が、24時間営業の見直しや店舗拡張抑制などを求めて大手チェーンと交渉を重ねているが、若年層の失業率が特に高いフィリピンでは人手不足の話はまったく聞かない。

 出店過多による「共倒れ」も今後はあるはずだが、まだ飽和には至っていないようで、一度開店したコンビニが姿を消す例はマニラではまれだ。新興の中間層が共同でお金を出し合い、フランチャイズ契約を結び、開店させる例が多いという。

ジャーナリスト 石山 永一郎

 

(KyodoWeekly7月1日号から転載)

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