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健康食品が爆買いされる理由  「三無」、規制進まない中国

  日本と同じ、中国も高齢化社会になった。高齢者を狙ったさまざまなビジネスが盛んになり、社会問題となっている。特に健康食品に関していくつかの企業が高齢者をだまし、高価なものを売りつけ、一大産業に成長した。しかし、健康被害が出たり、家族と関係が悪くなったりするなど問題が続出。中国政府はようやく取り締まりを始めた。

 

 今年の1月に、中国健康食品大手企業の一つ「権健自然医学科技発展有限公司」を訴追すると中国の公安局が告示した。

 同社の経営者をはじめ、約20人の関係者が逮捕された。同社の略称は「権健」で、数年で大きな会社に化け、巨額な財産を手に入れた。権健グループの管理者束昱輝は権健の大株主という立場のほかに、サッカークラブのトップで、中国全国政治協商委員にも選出された人物である。

 2004年に設立された権健は体内毒素を排除できる靴敷と、人体内の生物電磁波をバランスよくする器具と「火療館」という三つを武器に、強引な販売方法でたちまち大企業の仲間入りすることができた。

 中国商務部から直接販売の許可を取ったが、裏では「ねずみ講」を大々的に行い、うその製品宣伝や治療を行ったという。 16年は、年間利益が196億元(およそ3332億円)に達した。金持ちになった権健は、国際企業にも手を伸ばし、ドイツなどに展開した。30億元を投じ、世界的に有名なサッカー選手アントニー・モデストなどの選手と契約を結び、権健サッカークラブを設立させた。

 

「神薬」でがん治療

 

 このように、権健の企業イメージを良くしながら、ねずみ講を含め、さまざまな悪行を隠し通した。告訴されて分かったことは以下の通りであった。束は名門の清華大学卒業と言ったが、学歴詐欺だった。自社製品を「神薬」のように吹聴し、誇大広告を出し続けた。「火療館」を設立し治療行為をした。

 そして、3日間の研修で、数多くの火療士証書を発行。その代わりに加盟金をだましとった。がんも神薬で治療できると宣伝し、多くの病院を作った。大変苦労しながら、その神薬を見つけ、莫大(ばくだい)な金額で薬の処方を買ったなどといううその話を作り、自社製品の有効性を人々に信じさせた。

 こうして、権健の火療館や病院は、全国各地に広がり、健康食品や健康器具を含めた自社製品は60種類にも上った。

 中国「新京報」の報道によると、16年の時点でフランチャイズの権健病院は全国で600を超え、7千の火療館などの施設を全国各地に展開。こうして権健帝国を作り上げ、高齢者ら多くの人々が〝餌食〟にされた。今年1月に入り、、告発を受けた当局により取り締まられ、帝国にメスが入った。

 

洗脳

 

 権健が摘発される前から、中国ではすでに健康食品産業が社会問題を引き起こしていた。多くの健康食品企業は住宅地などで無料講座を開き、健康器具の体験や、薬品の無料配布で高齢者を誘った。

 そして、体の悩みを聞きだし、高い健康食品や器具を売りつけた。最初は少ない金額で、高齢者に信頼されたら、ねずみ講にひっぱり込むという手法だ。

 この結果、一生分の財産をだまし取られた高齢者が多くいる。もし家族から買うことを止められた場合、同社担当者は高齢者に「家族があなたの財産を狙っているので、買わせないのだ」などと洗脳するという。筆者の知り合いからは、自分の親が健康食品にはまり、心配する声をよく聞く。

 中国政府が発行する「法制日報」の報道によると、多くの健康食品会社に一連のマニュアルがある。

 情報収集、顧客分析、家庭訪問、専門家の講座、そして販売へ。無料講座のほかに、お土産や無料の健康検査なども手口の一つで、さまざまな方法を使い、高齢者のお金をだまし取る。

 年金や預金を全部使う老人が続出しているほか、効果のない商品によって、本当の病気の治療が遅れて死んだ人までいる。

 しかし、だまされた人々は警察を頼らず、それまで「親切」に接してきた健康食品会社の販売員たちを信じてかばってしまうという。高齢者がねずみ講にはまり、お金を出さないと軟禁され、その人が救出されたというニュースもよく目にする。

 こんなに高価な健康食品の質はどうか? はっきり言えば、品質はとても悪い。その証拠に「三無」という専用の言葉が作られている。「三無」と呼ばれる健康食品とは正式な製造会社が作ったではない。製造日の記録がない。質の検査もされていない製品のことだ。これら「三無」健康食品は、中国の市場であふれている。これで、中国の人々が、日本で健康食品を買いあさる理由が分かるであろう。

 中国の健康食品の歴史は浅く、たったの30年にすぎない。経済発展を重視するあまりに、管理はおろそかになった。審査手続きは簡単で、経営許可はおりやすい。規制する法律も整備されていなかった。

 その結果、暴利を生み、多くの違法企業を世に送り出した。中国国家統計局の統計によると、2013年、中国健康食品市場規模は1574億元で、15年に販売額は約2千億元で高齢者消費の50%以上を占めているという。

 15年の健康食品の製造企業数は2440社にも達していた。今回の権健の崩壊を機に、中国政府は健康食品市場を整理し始めたが、すでに遅かった。

 多くの健康食品企業は現在、当局による取り締まりを逃れるため、知識の乏しい農村地域で営業をしているからだ。進化したマニュアルを用意し、人々をだまし、「三無」の健康食品を売りさばいている。

(中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly5月20日号から転載)

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