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異様な緊張続く習近平政権 経済減速より政治リスク重視

 今年1月、中国吉林省長春市の中心部ビルで起きた爆発事件を覚えているだろうか。公安当局によると、死亡した男(56)を容疑者と断定したという。しかし、中国のインサイド情報に詳しい龍評氏は、習近平政権が本当の事実を明らかにしていないのでは、と疑問を投げ掛ける。難題の米中貿易摩擦だが、それ以上に国内の権力闘争が異様な緊張感を生み出している、と指摘した。(編集部)

 

 公安当局が発表した情報によると、1月25日、長春市の商業ビル「万達広場」で、30階北側の部屋が爆発し、地下駐車場でも車が炎上。1人が死亡、1人がけがをしたという。

 これに対し「新京報」の報道によると、現場にいる人々が撮った映像に、連続した爆発音が響きわたり、煙は広場に充満し、多くの人々が四方八方に逃げる様子が見えた。爆発音が20数回以上だと現場の人が証言した、と別のメディアが伝えた。明らかに政府の公表と比べ、大きな事故であったことが分かる。

 翌日、中国国営通信の新華社は速報で、事件の原因は郭という男性ががんを患い、失望のあまりに自分が製造した爆発物で事故を起こした、と報じた。

 そして、政府系のマスコミはこぞって、長春の爆発は刑事事件だとの見出しで、報道し始めた。足並みをそろえた報道に対し、かえって事件の不審さを浮き彫りにしたようだ。

 かつて習氏暗殺を狙ったとささやかれた天津大爆発事件のように、長春の大爆発の真相も闇に葬られるに違いない。習政権にとって、年頭に発生した「長春大爆発事件」が象徴するように、この1年は不穏で難しい年になりそうだ。

 

突然の重大会議

 

 もちろん中米貿易摩擦は習政権にとって最大の難関である。しかし、国内の危機はもっと強烈で、それは政権内部から漏れ伝わる異様なシグナルが物語っている。爆破事件が起きる少し前の1月21日、中国政府は突然、重大会議を開いた。会議は中国語で、「省部級主要領導干部堅持底線思維着力防范化解重大風険専題研討班」。全国の省部級幹部を習国家主席ら共産党指導者が執務する、北京の中南海に集合させた。

 新華社の報道によると、習氏がこの会議で重要談話を発表し、「風険(危険)意識」という言葉を連発したという。

 それは「政治危険、意識形態の危険、経済危険、科学技術の危険、社会危険、外部環境危険、党の建設など領域の危険」で、それら多くの危険に意識を高め、未然に防ぎ対応せよ、と幹部たちに要求した。

 指摘された危険の種類は、多くが政治リスクであることに注目したい。つまり、習氏は経済の減速より、政治リスクに神経をとがらせているといえる。

 しかも、高級幹部に繰り返し、政治危険を強調するのは、逆に習氏の権力が脅かされているのではないか、と考えざるを得ない。高級幹部たちは本当に、習氏に忠誠を誓っているのか、との疑念も湧く。

 省級以上幹部緊急会議の翌日、1月22日、中国「民主と法治時報」や「新浪網」は、公安部部長の内部談話を公表した。

 それによると、公安部部長が全国公安庁局長会議で「顔色革命(カラー革命)」を防ぐことに重点として、治安安全戦争を勝ち取ろうと呼びかけたという。

 長春の爆破事件が起きた25日、習氏が主催した「中共中央政治局会議」で「中国共産党重大事項請示(指示を仰ぐ)報告条例」が承認され、正式に打ち出された。

 

ペンと紙は持ち込み禁止

 

 昨年に開催されるべきだった、幅広く政策を討議する共産党の重要会議「第19回中央委員会第4回総会(4中総会)」は理由も明らかにされず、延期されている。4中総会を開かない一方で、習氏が相次いで「緊急会議」を開き、「危険」予防を連発するのは異例であると言わざるを得ない。

 そのような習氏の政権運営は、彼の権力が思ったより安定していないのでは、と思わせる。 また、彼はこの一連の緊急会議を通して、自分の反対派の批判を封じたいと考えていたようだ。ある知識人は「4中総会」が予定通り開かれないことも、習政権の路線闘争が発生したからだと分析している。

 中南海の会議では飲み水、ペンと紙の持ち込みは禁止、会議の名前を書いた看板もかけないほど、裏会議といえる打ち合わせが人知れず行われている。

 時計の針を少し戻して、2019年最初の1カ月だけに着目してみた。そこから見通せるのは、激しい中米貿易戦の裏で、中国国内では激しい権力闘争が繰り広げられているということだ。習氏が対応に忙殺され、政権内に異様な緊張感がある状態は今も続いている。

(中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly5月13日号から転載) 


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