国際
政治・経済・国際の解説&分析記事

ホーカーズと公共交通

ホーカーズでの食事(筆者撮影)

 シンガポールという国に、皆さんはどのようなイメージをお持ちであろうか。

 世界有数の裕福で先進的な都市国家、ビジネスの中心地、物価の高い国などが一般的であろう。英経済誌エコノミストによると、2017年時点で5年連続、シンガポールは世界で最も生活費が高い都市の座をキープしている。筆者自身もシンガポールでの生活が決まった時には、治安の良さ、清潔さに安心する傍ら、物価の高さを心配していた。

 しかし、実際に暮らしてみて実感するのは、国家政策のおかげもあり、シンガポールではそれぞれの懐事情に見合ったそれなりの暮らしができることだ。それは、「ホーカーズ」と公共交通があることの効用が大きい。

 まずはホーカーズ。外食文化が根付くシンガポールにおいて、レストランでの食事はメニュー表示価格に加えてサービス料10%、GST(消費税)7%が付加され、割高(現地日本人の間では、この現象をプラスとプラスで“プラプラ”と呼ぶ)だが、政府が管理する屋台村「ホーカーズ」では政府の補助金が入っており、金融街周辺でも3~8シンガポールドル(約240円~640円)で1日中食事を取ることができる。世界一安いミシュランガイド掲載店は、シンガポールにあるホーカーズで食べられる4・5シンガポールドル(約360円)のチキンライスと聞く。

 次に交通。シンガポールでは渋滞回避のため、車体数制限を目的とするさまざまな税金がかけられ、自動車を保有するには日本の3倍以上の経費がかかるが、多くの国民が利用する公共交通機関は驚くほど安い。

 アジアでもトップクラスの清潔さを誇る地下鉄の初乗り料金は円換算で70円以下、端から端まで乗っても160円程度である。

 この国の歴史を振り返ると、1965年、マレーシア連邦から半ば追放される形で独立した当時は、国土も小さく資源、産業もなかったため「未来のない国」とやゆされた。独立後、シンガポールは企業優遇策の実施や、土地を政府が一方的に収用し、産業インフラを整備するなど、強烈なトップダウン方式で国家生存をかけ、外資誘致を行った結果、1人当たり国内総生産(GDP)がアジア1位となるほどの経済発展を遂げた。

 当然、高所得者を集めるには低賃金で働く単純労働者も確保せねばならない。少し考えてみれば、綿密な国家戦略を実行し、経済発展を遂げたシンガポールが、中流、中下流層が暮らせない国を造るはずがないと言える。

 ホーカーズの食事は野菜が少なく、脂っこいため体に良いとは言い難いが、先進国家シンガポールのイメージとのギャップを楽しみながら、地元の方々とともにホーカーズで昼食を取る今日この頃である。

(国際協力銀行 シンガポール駐在員事務所 上辻 春菜)

 

(KyodoWeekly3月18日号から転載)


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

第98回天皇杯 トピックス

決勝の結果(12月9日開催)

浦和レッズ   1-0   ベガルタ仙台

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ