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日本人作家が人気

 韓国の大手書店「教保文庫」が1月末に、2009年1月18日から2019年1月17日までの10年間に小説部門で最もよく売れた作家を発表した。教保文庫は韓国の出版業界で20~25%の売り上げを占めており、韓国読書界の一定の傾向を読み取ることができるデータだ。

 過去10年間で韓国人に最もよく読まれた小説家は日本の東野圭吾で、教保文庫だけの売り上げで127万部に達した。第2位も日本の村上春樹(100万部)だった。第3位はフランスの作家でベルナール・ウェルベル(85万部)、第4位もフランスの作家でギヨーム・ミュッソ(57万部)だった。

 その次からようやく韓国人作家が登場し、第5位が金辰明(キム・ジンミョン)(52万部)、第6位が申京淑(シン・ギョンスク)(43万部)、第7位が趙廷来(チョ・ジョンレ)(42万部)ということだった。

 トップと第2位が日本人作家というのは面白い。あまり日本人にとってはなじみのないフランスの作家が3、4位というのも韓国人の現在の嗜好(しこう)を示しているようで興味深い。

 教保文庫によると、昨年の小説部門の販売実績は、日本人作家の占める割合が31・0%で、韓国人作家の29・9%を初めて上回った。東野圭吾の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」や村上春樹作品が売り上げを押し上げたという。

 韓国では、1970年代には山岡荘八の「徳川家康」が「大望」という題名でロングセラーになった。全12巻という分量にもかかわらず、韓国の政治家や企業家の愛読書になった。

 筆者は昔、日本の植民地時代に日本語教育を受けた韓国人の方から「日本の『徳川家康』を全巻持ってきてくれ。日本語で読みたいんだ」と言われ困ったことがある。確か、日本の「徳川家康」は20巻以上という大量でとても一度に持って行ける量ではなかったからだ。最近では朴槿恵(パク・クネ)前大統領が逮捕され、獄中でこの「大望」を読んでいることが話題になった。韓国メディアでは、朴前大統領は家康の「忍耐」を、自分自身の運命に重ねているのではという見方も出た。

 韓国では推理小説という分野があまり成長しなかったこともあり、松本清張作品などもほとんどが翻訳され、韓国では日本人作家が確実に一定のファンを獲得していた。

 しかし、ここ10年ほどは新しい流れが生まれている。ソウルの大型書店に入り、小説部門のベストセラーコーナーをのぞくと、日本の作家が上位を占めていることは珍しくない。東野圭吾や村上春樹ら日本人作家の小説を読んでいるのは、韓国でもあまり本を読まないといわれる若い世代だ。

 日本でKポップや韓国ドラマが大人気なように、韓国の読書界では日本人作家の人気が高い。東野圭吾や村上春樹は出せばベストセラーだ。ファンたちは翻訳が出るのを待ち構えているという状況だ。昨年は薬丸岳の「誓約」や小林泰三の「アリス殺し」が人気を呼ぶなど、韓国の読者が新たな日本人作家を求めているような兆しもある。

 従軍慰安婦問題、元徴用工問題、レーダー照射事件などで日韓関係は最悪の状態に陥っている。だが、韓国には歴史問題などの葛藤は抱えながらも、日本を総体として否定しないような市民意識があるような気がする。

 日韓関係は悪化しているが、日本を訪問した韓国人は2018年、前年比5・6%増の約753万9千人で過去最多だ。韓国の約5180万人という人口を考えるとすごい数字だ。訪韓した日本人も対前年比27・6%増の294万8500人だった。「反日」という言葉でひとくくりにすることのできない韓国の市民意識に注目したい。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly2月18日号より転載)

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