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パキスタン再建に奔走 元国民的スターの新首相

 パキスタンで今年7月の総選挙で勝利し、8月に首相に就任したクリケットの元スター選手、イムラン・カーン氏(66)が財政危機回避に向けて奔走している。同国は前政権時代から推進している、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」関連事業に伴う対外債務の増加などで外貨準備高が激減、債務危機に陥る懸念が強まっており、新首相の手腕が注目されている。

 

 財政危機を受けパキスタンは、10月上旬に国際通貨基金(IMF)に対して緊急支援を要請した。また同月下旬、イスラム圏の盟友サウジアラビアから最大60億ドルの財政支援の約束を取り付けたが、当面の危機回避には120億ドルが必要とみられ、カーン首相は11月初め、就任以来初の中国訪問で李克強(り・こくきょう)首相ら指導部にも支援を要請したもようだ。

 1947年に英領インドから二つの国に分離・独立して以来、軍政と、民主主義の形をとっても地域名士によるネポティズム(縁故重視)色の濃い政治が繰り返されてきたパキスタンで、国民に人気のあるカリスマ政治家が政権トップの座に就くのは初めてだが、新政権は滑り出しから難問に悩まされている。

 

スター選手から政界に

 

 カーン氏は92年のクリケットのワールドカップでパキスタン・チームを優勝に導いた主将として脚光を浴びた。英オックスフォード大に学んだ学歴や、持ち前のハンサムな顔立ちを備えたカーン氏が引退後に「汚職とコネ政治を排除し、クリーンなパキスタン社会の建設を目指す」と政界入りの意思を明らかにすると、国民の間では「将来の首相候補」との声が沸き起こった。自身を党首にパキスタン正義運動(PTI)を96年に設立し、その後、総選挙戦に挑み当選。しかし、その後は長い間、選挙ではカーン氏以外に議員が増えない孤軍奮闘の時代が続いた。

 

政治不信が支持広げる

 

 パキスタンは建国から71年の歴史の中で軍事クーデターが3回起き、軍政の支配期間は半分近くに及ぶ。東パキスタンが分離し、バングラデシュとして独立した後の73年、ズルフィカル・アリ・ブット首相(2007年末に暗殺されたベナジル・ブット元首相の父)が議員内閣制への移行を宣言して自身が初代首相に就任して以来、選挙による文民政権も何度か誕生した。

 しかし、その政権を率いたのは最大の商業都市カラチを抱える南部シンド州の名士ブット家=パキスタン人民党(PPP)=と、「パンジャブを制する者はパキスタンを制する」と言われてきた中部パンジャブ州の富豪シャリフ家=パキスタン・イスラム教徒連盟PML(N)=の縁故者にほぼ限られ、国民の間には根強い政治不信が醸成されていった。そして軍は文民政権下でも外交、国内治安政策に関しては隠然たる影響力を行使し、「文民宰相の役割は式典のテープカットだけ」と揶揄(やゆ)する声さえ公然とささやかれてきた。

 特に2016年の「パナマ文書」で発覚したタックスヘイブン(租税回避地)に絡んだ資産隠し疑惑で、前政権与党PML(N)を実質的に率いたナワズ・シャリフ元首相(68)が最高裁判決で有罪を認定され、今年7月13日に収監されたことから、急速に勢いを失い、7月の選挙では議席を大幅に減らした。

 これに対して汚職根絶を訴えたPTIは特に若者層の支持を取り付け最大勢力に。過半数に届かなかったものの、少数政党と連立で政権発足にこぎ着けた。「国民的英雄」とあがめられながら20年以上も芽が出なかったカリスマ指導者に、ついに出番が訪れた。

 

軍の後押しのうわさも

 

 もっとも7月の選挙では政策をめぐってPML(N)の前政権と対立した軍は露骨に同党の運動を妨害し、PTIを後押ししたとのうわさも根強く、カーン氏も政権運営で軍の影響を受けかねないと懸念する声もある。

 現在、約2億人の人口を抱えるパキスタンは過去に隣国インドと3回の戦争を経験して同国と緊張関係が続き、1998年にはインドに続いて核実験を行った核保有国でテロも頻発、国内のイスラム過激派の活動も活発化が指摘されている。

 東西冷戦下で隣国インドが旧ソ連と関係が深かったのに対抗して米国がパキスタン支援を続けた時期が長かった関係もあって、日本は早くから地道な経済支援や企業進出を続けた。「一帯一路」に絡んで政権の中国との結び付きは強いものの、一般国民の親日度は高い。

 

対日関係に影響ない

 

 政権交代やクーデターを繰り返す中でも歴代政権は一貫して日本との関係は重視してきた。日本政府は98年の核実験実施に際して新規円借款停止など経済制裁を実施したが、3年後に解除。カーン新政権も「経済支援や国内インフラ開発などの分野で日本の役割を期待する点で基本的な変化はないだろう」と外交専門家は見ている。

 

[筆者]

フリージャーナリスト

須田 浩康(すだ ひろやす)

 

(KyodoWeekly12月17日号より転載)


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