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トランプ氏再選に黄信号 米中間選挙、与党が手痛い敗北

 米中間選挙は政権与党共和党が下院で大幅に議席を減らし、上院や知事選でも重要な州を失ったことで、トランプ大統領にとっては手痛い敗北となった。米国は2020年の大統領選に向けて走りだしたが、トランプ氏は再選戦略の練り直しを迫られている。一方の民主党は若者、女性、人種的少数派という支持基盤を糾合し勢いを見せたが、リベラル派と穏健派の対立は激しさを増すとみられ、20年の党候補選びの戦いは熾烈(しれつ)を極めそうだ。トランプ氏の再選は、黄信号がともった。

 

 あまり報道されていないのが、両党の得票数の差だ。435の全議席が改選となり民意をより反映する下院選挙は、民主党の得票数が51・1%で、共和党は47・2%、その差は3・9%で540万票となった。2016年の大統領選でクリントン氏はトランプ氏より300万票(2・1%)多くとったのだが、今回はその差がさらに広がり、明らかに民意は民主党に向かっている。

 出口調査によると、若者の67%、女性の55%、そして人種的少数派の76%が民主党に投票した。米国の選挙は一般に都市部が民主党、地方が共和党と分かれ、中間にある郊外の行方が焦点となるが、今回は郊外部も民主党が優勢だった。

 トランプ氏の再選戦略に痛手となったのは、上院でミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどラストベルトで共和党が振るわなかったことだ。テキサス、テネシーなど伝統的な共和党州は押さえたが、ラストベルトがとれない場合は再選は苦しい。ラストベルトこそが16年に世界を驚かせたトランプ現象の震源地だけに、その行方は米政治の潮流を占う。また女性議員の大幅増も、多くの国民が女性蔑視のトランプ政治にノーを突き付けた結果と言えよう。

 トランプ氏は投票日翌日の記者会見で厳しい質問をする記者にきれ、外国人記者を侮蔑するような発言をした。またその後のフランス訪問や第1次大戦終結100年式典での仏頂面も話題となった。こうした言動は選挙が思う通りに行かなかった不満の噴出であろう。司法長官を更迭したほか、人事をめぐる対立が伝えられており、選挙結果を受けたホワイトハウスの混乱がうかがえる。

 トランプ氏が再選を果たすには、ラストベルトが満足する政策の遂行が必要となる。そのためには国民が望むインフラ整備や医療保険制度の改革が必要で、予算を握る下院で多数派の民主党との協調は不可欠だ。一方で今後の米政局の焦点は、ロシア疑惑の捜査の行方であり、下院民主党が、近く提出されるモラー特別検察官の報告書を受けて、議会調査権をフルに使ってさまざまな調査を始めることは間違いない。トランプ氏はロシア疑惑の捜査に対しては「根拠のない魔女狩りだ」と感情的に反応しており、両党の協調は難しい。

 トランプ氏は停滞する政策遂行を「疑惑追及に血道を上げる民主党が協力しないためだ」と主張して民主党責任論の攻勢をかけるはずだ。1990年代に不倫もみ消し疑惑の渦中にあったクリントン大統領が、共和党の非協力を国民に訴えて選挙で勝利した成功がお手本となっている。民主党も国民が疑惑追及よりも政策遂行を求めていることを十分理解しないと、そうした失敗を繰り返す可能性がある。

 民主党の最大の課題は、今回の選挙で力をつけた社会民主主義的な「左」の傾向を強める若者らと穏健な民主党支持者をまとめるリーダーが2020年に出現するかどうかだ。16年はそうした人物が現れずに、トランプ氏に敗北した。

 

 恐怖戦術を加速か

 

 中間選挙の勝利は若者の投票率の上昇によるところが大きく、ニューヨークから最年少の女性下院議員として当選したオカシオコルテス氏や僅差で敗北したテキサス州上院議員選のオルーク氏らがその象徴だ。クリントン氏が代表する「政策は中道。選挙は民主党組織」という旧来の民主党穏健派では、今の分極化する米国でトランプ氏に勝てない。「選挙は草の根」で若者の支持を集め、かつ政策は穏健派を満足させるリーダーが必要となる。これは至難の業だ。

 もう一つの課題は移民政策となる。米国は移民の国でありながら、押し寄せる中南米系の移民や9・11テロが国民に植え付けたイスラム系移民に対する恐れは簡単には払拭(ふっしょく)できない。米国経済はリーマン・ショック後の景気拡大局面の終焉(しゅうえん)、昨年12月の大型減税効果の減退、中国との貿易戦争の打撃など、2019年は景気が失速するとの予想は広がっている。こうした中でトランプ氏が移民問題を米国民の安全と職の確保という2点で国難として大きく取り上げ、恐怖戦術を加速させるとみられる。

 実際、中間選挙の選挙戦でトランプ氏は好調な経済の実績をアピールするよりも、中南米系移民「キャラバン」を米国への侵略と表現して恐怖をあおり続けた。トランプ氏は自分に応援演説を頼んだ共和党候補は勝利した、と豪語しており「外部」に対する怒りを基盤とするトランプ現象はついえていない。移民をめぐる米国の分断が癒やされることはない。

 民主党は移民に対する有権者の不安を解消する移民政策を打ち立てなければ20年も大統領選で敗北する可能性が大きい。「壁」の建設に前向きになるくらいの決断が必要だ。寛容だけでは政権を奪取できない。

 英国の欧州連合(EU)離脱やドイツのメルケル首相の引退表明で明らかなように、今の先進国では移民に対する国民の拒否反応こそが政治をもっとも左右し国家の行方を決める。政治家はその拒否反応をあおるポピュリズム(大衆迎合)やナショナリズムで票を得ることが得意だ。その頂点に立つのが、トランプ氏と言えよう。

(共同通信特別編集委員 杉田 弘毅)

 

 (KyodoWeekly11月26日号より転載)


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