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P2P金融が招いた「爆雷」 中国経済の時限爆弾か

  6月ごろから「爆雷」という言葉が中国のインターネット上にたびたび登場した。爆雷のせいで、多くの民衆が北京中心部などに集まり、デモをした。参加者は、ネットを通じて個人同士のお金の貸し借りを仲介する「P2P」(ピア・ツー・ピア)金融ビジネスで投資し損失を被った人たちだった。政府は規制を強めているが、処理を誤れば、中国経済の時限爆弾になるかもしれない。

 

 爆雷とは金融機関の経営破綻などによる金融不安を指す言葉だ。具体的には、P2Pを経営する会社が破綻したり、社長が夜逃げしたりして、大きな社会問題となっている。

 2012年から中国政府が新分野の経済を推進し、その一環として、P2Pが続々と現れた。その時点で2千余りの会社が作られた。14年に民間の銀行が正式に参入したこともあり、P2P業界の勢いが増した。

 ある調査会社によると、全体の融資残高は1兆4900億元(約24兆円)に達するという。

 一見、順風満帆のネット金融事業は、今年に入り、大きく変調した。中国最大手の検索サイト百度(バイドゥ)によると、今年6~7月中旬までに163社のP2Pに関わる会社が爆雷したという。

 それで、多くの被害者たちが政府に問題を解決してほしいと要求し、北京に集まったのだった。彼らは「P2P難民」と呼ばれ、中には自殺した人もいた。 難民たちは自分の貯金だけではなく、高金利の蜜を吸った後、親戚や知人から100万元を超える借金をして、全部P2Pに投入した人も数多くいる。投資した被害者に限らず、経営者の中にも自殺に追い込まれた人もいた。

 

規制がなかった

 

 中国政府はあわてて被害者たちの気持ちを和らげようと、爆雷した会社の社長らを逮捕し始めたが、消えたお金は戻るはずがなかった。

 そもそも爆雷を起したのは政府がネット金融に対して適切な管理をせず、また制限する法律もないことに原因があった。新しい経済の看板として、あるべき規制もないまま進められたP2Pは、資金が困っている中小企業、また個人企業家のニーズに合っていた。

 高金利で民間の資金を容易に集め、さらにネットで手続きを便利にさせ、人々を群れさせた。お金もうけがしやすいと、P2Pはあっという間に政府系の銀行をしのぐ勢いで成長した。

 表面的には、P2Pをやっているのは民間企業の方が多いのだが、実際のところ、金融や保険の大手国有企業が多く参入した。だから乱立のあまりに爆雷はいつ起きてもおかしくない状況に陥っていたのだ。

 一方、政府は昨年末、規制に乗り出す旨を示す通知を公表しており、P2P〝冬〟の時代が

想定内とされ、今年6月の爆雷連鎖につながったという見方もでている。

 

背景には債務削減の圧力

 

 今回の問題の背景には、中国の財政赤字の大きさがある。08年から右肩上がりに増え続け、健全な経済発展を目指すならば、これ以上赤字幅を拡大させることはできない。だから、今年の中国経済の重点の一つは、債務の削減であった。

 そのような債務削減の圧力が強まる中、P2Pの爆雷も発生したといえよう。国内総生産(GDP)連続の下落、外貨流出による外貨保有率の激減、不動産業界の不景気など、中国経済は思われているほど、順調に推移していない。

 だからさまざまな方法で、富裕層が持つ資産の再分配を狙い、お金を吸い上げようとしているとみられる。

 筆者は以前取り上げたが、中国電子商取引(EC)最大手アリババグループの馬雲(ば・うん)会長や、中国を代表する人気女優ファン・ビンビンさんらお金持ちは富の再分配の標的にされた。今回のP2Pの連続爆雷も政府の意向で行われたといわれている。(10月8日号「馬さんが辞める本当の理由」)

 一部の報道によると、政府は厳しい規制に乗り出すことで、P2Pの資金供給ラインをたち、それで倒産などに追い込まれた個人や企業の莫大(ばくだい)な資産を没収する。そして、業界の再構築や財政の危機を和らげようとする狙いがあるという。

 そもそも、ネット金融やP2Pの被害者は単なる投資者だけではない。

 借りる側の被害も深刻だ。とりわけ大学生、特に女子大学生の被害者が多い。携帯電話や化粧品などぜいたく品が欲しいあまりに、経済力の弱い学生たちは簡単に金を貸してくれるネット金融に手を出した。女子大学生たちは担保がないから、業者に裸の写真や家族、友人の詳細な個人情報を提出すれば簡単にお金を借りることができた。

 それが社会問題になり「裸賃」という言葉まで作られた。その方法で金を借りた女子大生たちは、もし金が返せない場合、性的なサービスなどで返すしかない事態に追い込まれた。

 そうでもしないと、裸の写真をばらまかれたり、家族が代わりに金を返せと要求されたり、さまざまなむごい仕打ちを受けることになる。中には耐え切れず、自殺した女子大学生もいるという。

 過激な借金の取り立てで刑事事件も多発し、問題は深刻になるばかりだ。P2P難民たちや借りる方の被害者らの問題は中国経済の時限爆弾となり得る。うまくコントロールできなければ、社会動乱に発展する可能性も懸念される。

(中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly11月19日号から転載)


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