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南北首脳の「おじぎ」

 韓国の文在寅大統領が南北首脳会談のために9月18日に平壌を訪問した時、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は李雪主夫人を同伴し、平壌国際空港に文氏夫妻を出迎えた。北朝鮮最高指導者が夫人同伴で海外賓客(ひんきゃく)を出迎えたのは初めてだった。

 北朝鮮の朝鮮中央テレビは翌19日午後、南北首脳会談第1日目の様子をまとめた約25分間の映像を放送。映像には文氏が歓迎する平壌市民に近づき、握手したり、深々とおじぎをしたりするシーンが含まれていた。

 北朝鮮では最高指導者が予告もなく一般市民に近づいて握手をすることは考えられないが、深々としたおじぎは、北朝鮮住民に強い印象を与えたようだ。

 韓国の北朝鮮専門ネットメディア「デイリーNK」によると、この映像を見た北朝鮮の平安北道の住民は「われわれ朝鮮で、首領がこんなあいさつをするのは見たことがない。(文氏のあいさつは)珍しいどころではなく、南朝鮮の大統領は善良な人で、国民のために生きている人のように見えた」と文氏を高く評価したという。

 注目すべきは北朝鮮当局が、今回の映像で文氏のおじぎをカットせずに放送したことだ。北朝鮮内部で文氏を評価する反応が出ることを承知の上で、放送した可能性が高い。

 そうしていると面白いことが起きた。北朝鮮メディアは9月29日、金氏が名門大学、金策工業総合大を訪問したと報じた。北朝鮮の人たちが驚いたのは金氏が同大教職員に対し、少し腰を折っておじぎをした姿が朝鮮中央テレビで流れたことだった。この訪問は南北首脳会談後、初の金氏の公開活動だったため、文氏の平壌市民への「おじぎ」が影響を与えたのでは、という見方も出た。

 金氏は、錦繍山太陽宮殿を訪問し、故金日成主席や故金正日総書記を慰霊する際には深々とおじぎをするが「人民」に対して「おじぎ」をすることはそれほど多くはない。それでも1月の「新年の辞」を発表した際などにおじぎをしたこともある。

 金氏の姿勢は「幹部には厳しく、人民には温かく」を基本に「人民から愛される指導者」を目指しているという感じはあるが、まだ「おじぎ」の仕方に慣れていないようにも見える。北朝鮮住民も儀礼的なものか、心がこもったものかは読み分ける能力があり、為政者にとっては人民は手ごわい存在だ。

 金氏と文氏は9月20日にともに白頭山へ登った。韓国では写真を撮る時に親指と人差し指を交差させてハートマークをつくる「ハートサイン」が流行している。金氏夫妻は記念写真を撮った際に、韓国側の随行団の要請を受けてこれをやろうとしたがうまくいかず、李雪主夫人が手を添えるポーズを取った。金氏は韓国側随行員に「どうやるんですか」と尋ね、韓国側が教えると「これ、私にはできません」と照れくさそうにつぶやいたという。

 この話が韓国のメディアやネットで急速に広がって金氏の人間的な側面が話題になり、韓国では親近感が広がっている。金氏の人間味が韓国住民に少しは伝わったようで、今の南北に必要なのはそうした交流のようだ。

ジャーナリスト 平井 久志

 

(KyodoWeekly11月5日号より転載)


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