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自己相対化説く台湾作家

 龍応台(りゅう・おうたい)さんは、2012年に新設された台湾文化省の初代大臣を務めた作家である。その彼女に大臣就任後にインタビューしたことがある。話は、彼女の代表作「大江大海1949」(邦訳「台湾海峡一九四九」白水社)から始まった。台湾、香港で50万部を超えたベストセラーだ。

 国家と権力に飲み込まれたさまざまな人々の物語。自身の両親をはじめ、無理やり軍隊に連れてこられた若者、捕虜を銃殺し、戦犯として死刑判決を受けた台湾籍日本兵、抗日戦争中の中国軍兵士など、戦火の中でアリのようにつぶされた人びとの声を集めたオーラルヒストリーだ。

 

国家はタマネギ

 

 「どんな国家もタマネギに似ています。皮を一枚一枚むくと最後に残るのは人間。あらゆる国家神話は崩れる」。その価値観は台湾に生まれ育ち、米カンザス州立大で博士号を取ったこと。冷戦構造が崩れる1980年代後半、ドイツ人と結婚し、ドイツに住んだことと無関係ではない。

 異なる国家、人種、宗教、イデオロギーを体験することによって、あらゆる価値を相対化する思考方法が身についた。

 

台湾の座標軸

 

 インタビューで興味深かったのは、台湾人のアイデンティティーへの分析だった。「中華文化と公民社会という二つの融合」とした上で「(かつて台湾を植民地化した)日本は、もう明確な座標軸ではなくなった。新しい座標軸は中国大陸であり、日本ではない」とみる。巨大中国と隣り合わせで呼吸しなければ生きられない台湾のポジションの説明でもある。

 「外から台湾を見れば、独立か統一かでいつもけんかしているようにみえるかもしれない。でも、それは表面的なものにすぎません」ともいう。「民主と自由の追求」という共通認識が台湾で出来上がり、本省人と外省人の省籍矛盾や、独立か統一かという伝統的な二項対立を乗り越えたコンセンサスだとみる。

 日本では昔も今も「国益」という言葉が、あらがえない記号として大手を振り、ナショナリズムを刺激する。〝タマネギ〟でしかない国家を絶対視しても、生活者が得るものはない。隣国との不毛な争いを脱する一つの方法が、自己相対化の意識であることを彼女は教えている。

 

女性活躍の現実

 

 女性大臣の気負いはなく、ジェンダー差を意識することも全くない後味が良いインタビューだった。台湾ではトップ(蔡英文(さい・えいぶん)総統)をはじめ、立法委員(国会議員)の女性比率が38%と、世界192カ国・地域の21位。

 第4次安倍晋三改造内閣の女性閣僚がただ1人にとどまり、「女性活躍に逆行」と批判された。「女性活躍」と、お題目を唱えざるを得ないのがわれわれの足元の現実だ。

(共同通信客員論説委員 岡田 充)

 

(KyodoWeekly10月22日号より転載)


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