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野菜から考えるアジア

 東南アジア諸国は気候や人々の顔つき、社会のおおらかさなど共通点は多い。ただ、その中でもタイ、ベトナムなど大陸部アジアとフィリピン、インドネシアなど海洋アジアとでは、人々の価値観は大きく違う。

 タイ人やベトナム人はかなり個人主義的だ。中国文化の影響が大きい故だろう。個人の生活に他人が深く干渉してくることを好まないし、他人の個人生活にもあまり干渉しない。独立心が旺盛と感じる。

 対してフィリピンやインドネシアなど海洋アジアは、個人主義は嫌われ、協調性が何よりも重んじられる。自分が属するコミュニティーの人々と仲良くやり、波風を立てないのが海洋アジアの文化だ。

 食文化も前者と後者はかなり違う。食材や調味料などで共通するものは多いのだが、最大の違いは生野菜を好んで食べるかどうかにある。

 タイやベトナムはたくさん食べる。パクチーなどの香菜を山盛りに添えるタイのそばやベトナムの生春巻きなどがそれだ。火を通さない野菜もよく食べる。

 殺生を禁じる仏教文化の影響がこの両国では大きかったのだろうと思う。今はタイ人もベトナム人も普通に肉を食べるが、バンコクやハノイにはベジタリアン向けのレストランもある。

 一度、タイの僧院に泊まって完全ベジタリアンの生活を送ったことがあるが、コメと野菜だけでも食事はかなり美味だった。

 対して生野菜を食べない海洋アジアの筆頭はフィリピンだ。野菜は生ではなく、煮込みや炒め物に加えて食べる。ひと昔前までは生野菜には寄生虫などの危険が大きく、火を通すのが常識だった。

 そのフィリピンが最近変わり、日本料理や韓国料理がマニラ首都圏などで大衆化したことで、生野菜を食べる人が増えてきた。韓国料理店ではフィリピン人の若いグループが焼肉にサンチュを巻いて頬張る姿をよく見かける。

 ただ、フィリピンの野菜は奇妙なほどに高い。流通に問題があるためのようだが、タマネギ、ニンジン、レタスなどは時に東京のスーパーより高い。その分、肉は安く「キロ当たりの肉と野菜の値段が変わらない」とマニラ在住日本人の感想を聞く。

 フィリピン経済は年率6~7%の成長がなお続いているが、8月のインフレ率が6・4%に達するなど物価上昇が著しく、ドゥテルテ政権にとっては、その対策が最大の課題になっている。今年はルソン島をスーパー台風が襲い、甚大な農業被害を受けたこともあり、野菜の値段は高騰が続く。

 マニラのテレビ局のニュースでも連日「きょうの野菜の値段」が報じられるようになり、庶民は一喜一憂している。

 政治や事件が報道の中心だったフィリピン・メディアが、こういう消費者目線のニュースを頻繁に伝えるようになったのは、最近のことだ。これもフィリピンの変化の一つでもある。

(ジャーナリスト 石山 永一郎)

 

(KyodoWeekly10月8日号より転載)


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