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カンボジア下院選で思う

 カンボジアで7月末に行われた下院選で与党が議席を独占し、フン・セン首相の独裁が一層強まった。欧米や国連は「民主主義が後退した」と批判するが、フン・セン氏は気にしていない。今や中国が、最大の支援国だからだ。野党やメディアなどの批判勢力を露骨に排除しても中国は、欧米のように「人権や民主主義」を振り回して説教しない。

 欧米や国連のダブルスタンダードを、フン・セン氏は十分に知っている。かつてフランスはカンボジアを植民地支配し、ベトナム戦争時代に米軍はカンボジアを猛爆した。中国が支援するポル・ポト政権がベトナム軍に倒され、親ベトナム政権が成立すると、ゲリラ活動を行うポル・ポト派に、国連はカンボジア代表権を与えた。日本もそれを支持した。東西冷戦中のこうした出来事を、国際社会が検証し反省することはなかった。

 フン・セン氏は長らく、中国とは距離を置いていた。彼の「上司」だったベトナムと、中国は対立関係にあったからだ。だが中国は、影響力を取り戻すために、資金と労力を惜しまなかった。

 

中国と親密に

 

 「中国の外交官は、街中の食堂でわれわれと一緒に食事をし『カンボジアが何を必要としているのか教えてくれ』と言うんだ」。十数年前、あるカンボジアの役人が語った。大国の中国から歩み寄り、上から目線でない姿勢で意見を聞いてくれた、と彼は感動していた。間もなくして、中国が建設した道路や橋、ビルが増大し、中国語学校が人気になった。フン・セン氏は公の場で中国との親密な関係を公言するようになった。

 虐殺者と名指しされるポル・ポト派も、中国の経済的技術的支援を受けていた。ただし警戒は緩めなかった。他国から干渉されない独立国建設がポト派の夢だった。だがその実現過程で多数を死に追いやった。悲劇の原因や背景は何か。この頃、カンボジアやベトナムなどインドシナ地域で繰り広げられていた代理戦争の舞台裏で、各国が利益を求めてどう行動したか。元ポト派ナンバー2で現在92歳のヌオン・チア元人民代表議会議長も明かさず、歴史は間もなく闇に葬られる。

 

異なるものを排除

 

 ヌオン・チア元議長が認めたこともあった。反対分子を粛清したこと。秘密主義に徹したこと。「革命を守るために必要だった」と彼は自身の行為を正当化した。

 それを思い出し、ぞっとした。分かりやすい独裁政権だけを批判して、いい気分になっている場合ではない。自分たちを正当化し「異なるものを排除する」風潮は今、民主国家を自認する、日本を含む各国で強まっている。「あんたたちだって同じだ」。フン・セン氏はそう思っているかもしれない。

 首相に再任されたフン・セン氏は、中国とのさらなる関係緊密化を約束した。目端が利く彼は、その危険性も認識しているはずだが。

(共同通信記者 舟越 美夏)

 

(KyodoWeekly9月24日号から転載)


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