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貿易戦争と人民のホンネ

 トランプ米大統領が中国に貿易戦争を仕掛けて以来、習近平指導部もマスコミを動かし、宣伝戦を展開中だ。中国共産党機関紙「人民日報」をはじめ経済誌などを総動員し、「中国は必ず勝つ」と強調しながら、トランプ氏や米国政治家らの批判記事を掲載する。それらの記事には、ある決まり文句が頻繁に登場し、市民の失笑を買っている。

 それは「搬起石頭※(※は石ヘンに並)自己的脚」。つまり石を持ち上げて逆に自分の足に落とす意味で、日本の四文字熟語で言えば「自業自得」となる。

 例えば人民日報直属の「人民網」に3月下旬、「美国搬起石頭※自己的脚」(アメリカは自業自得の意)という見出しの記事が載った。このほか、解放日報や、国営通信新華社など、各メディアが争うように同じ見出しで反米文章を掲載した。

 「搬起石頭※自己的脚」という言葉をネット検索すると、ニュースだけでなんと2万7500件のヒットだ(執筆時点)。

この言葉が頻繁に中国のマスコミに登場していることに、多くの市民はあきれているという。

 風刺するいくつかの小話がつくられ、ネットを通じ拡散されている。

 「アメリカはなぜ、自分の足に石を当てるのが好きなのか? こんなに頻繁に当てるなら石はなくなるよ」。また「アメリカが自分の足に石を当てるなら、なぜ中国は抗議するの? うれしいはずなのに」「貿易戦でアメリカが自分の足を石で殴るならば、なぜ中国は最後まで対抗しなければならないの? おかしい」

 そして「外国の石は自分の足に当てる専用のもので、中国の石は触って川を渡る専用のもだ」と、中国では誰もが知っている、「石を触って川を渡る」という改革・開放路線を主導した鄧小平(とう・しょうへい)氏の名言をもじった小話もあった。この名言は、経験がないから探りながら前進するという意味だ。「シロネコであれクロネコであれ、ネズミを捕るのが良いネコである」という「白猫黒猫論」と同じくらい、誰もが知っている言葉である。

 中国商務省もアメリカに、「断崖の前で馬を止めるべく」と警告し、貿易戦は米国国益を失うものだ、と強調した。それも市民の小話の種となり、笑い飛ばされた。「アメリカが断崖の前に立っているというなら、中国は蹴って落とせばいいだけなのに、なぜ止めるようアメリカに忠告するの?」と。

 今回の貿易戦争で、中国政府は表向き、強気の姿勢を示しているが、本音はアメリカと戦いたくないのだ。

 しかし、中国の多くの国民はそうは考えておらず、逆に貿易戦争を歓迎している節がある。 というのは、貿易戦争の勝利の結果、もしかしたら関税が下がり、輸入車などが買いやすくなるのではないか、ということをひそかに期待しているからだ。特に化粧品など海外ブランド商品が安く買えるかもしれない、と人々が楽しみにしている。

 あくまで楽観的な見通しだが、その期待感から人々はトランプ氏に好感を持つようになっているという。たたえる小話も出回っている。

 「トランプ氏は習氏より、われわれ人民のことを考え、幸せに暮らせるようがんばってくれている。万悪の資本主義だったのにもかかわらず。翻って、習氏の威信は落ちる一方だ」

 アメリカとの貿易戦争だけではなく、あらゆる外交面で「強硬」路線を貫き、人々の利益を犠牲してもかまわないという、習氏の姿勢は中国の孤立を招いた。国民の多くがそう認識している。

 だから、今回の米中貿易戦争を通し、中国の人々が不満の声をあちこちで上げることができたといえる。

 (中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly9月17日号より転載)


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