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〝好機到来〟と彼は言った 「帰ってきたヒトラー」監督に聞く

1945年に自殺したヒトラーが、現代によみがえる。往年と変わらない言動で「ものまねコメディアン」と誤解され、テレビやインターネットの力で再び人心をつかんでいく。日本でも昨年、公開されヒットしたドイツのコメディー映画「帰ってきたヒトラー」は、日本を含め40カ国以上で翻訳された同名の小説が原作だ。トランプ氏の米大統領選出などポピュリスト(大衆迎合主義者)の台頭や右傾化する世界を予測したとも評された。監督デビッド・ベンド氏に製作の狙いなどを聞いた。

ドイツ東部ドレスデンで行われた「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」(PEG IDA)のデモ= 2016 年11 月(ハンスユルゲン・ブルカート氏撮影)

ドイツ東部ドレスデンで行われた「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」(PEGIDA)のデモ= 2016 年11 月(ハンスユルゲン・ブルカート氏撮影)

ショッキングな体験 

映画を監督したベンド氏にベルリンで会った。39歳。握手は控えめだが、話し始めると秘めていた映画製作へのエネルギーがあふれ出た。「笑った後に喉に引っかかるものを見せたかった」と言うベンド氏は、ヒトラーが選出された1930年代をほうふつとさせる現在の社会風潮に強い危機感を抱いていた。

デビッド・ベンド氏=ベルリン、2016 年11 月 (ハンスユルゲン・ブルカート氏撮影)

—役者扮するヒトラーがドイツ全土を回り、実際に市民と交流するドキュメンタリー風シーンが話題になった。
「映画の監督を打診された時、僕ならこう撮ると提案した。ドキュメンタリーだと結果が予測できないリスクがあったが、生の反応が拾え、だからこそ面白い。2週間ほどかけて全国を回ったが、ショッキングな体験だった」
「ヒトラーの格好をした男が近づくと嫌悪感を示す人も多かったが、予想以上の人々が好意的に反応した。『父親のように接して』と俳優には指示した。彼が『あなたが抱えている問題は何ですか?』と親しげに話し掛け、熱心に耳を傾けると、人々は本音を語り出した。難民や外国人排斥、ヒトラーの政策への賛同さえ口にしたのは若いネオナチじゃなく、普通の人たち。社会的成功者とみなされる50代以上の人もいた」
「外見は上品なのに内には恐ろしいものを秘めている、と思わせる人もいた。裕福な層が集まるリゾート地でも、こういう人を見つけるのは難しくなかった」
—映画のラストで、オープンカーに乗ったヒトラーが「好機到来だ」と語る。
「ヒトラーが力をつけた1920年代から30年代と今は相似点がある。グローバリゼーションや自由貿易の後、保護貿易、国境閉鎖などの動きが出て世界恐慌が起き、社会がものすごい勢いで変わった。結局、これがナチスに大きなチャンスを与えてしまった。物事がうまくいかなくなった時、人々はシンプルな解決法を求め、非難できる誰かを欲しがる。『難民のせいだ』『女性に力を与えすぎたせいだ』などと言い出す。ファシズムは優越感を約束し、大衆を扇動しようとする者は『私は問題を解決できる唯一の人間』と語る。この手法は今も生きており、まさにトランプ氏が使った」 

 

笑いだけでは止められない

—「私は人々の一部だ」というヒトラーのせりふがある。
「ヒトラーを魅力を備えた人間として描くと、戦後ドイツで徹底された『反ヒトラー』の原則を逸脱したと批判される。だがヒトラーを手に負えない怪物に仕立て上げ戦争やホロコーストの責任を押し付けることは無責任だ。犯罪の責任は、彼に権力を与え政策を支持した市民にもある。怪物や異常者に対して僕たちは何もできないが、笑い飛ばせばヒトラーは怪物でなくなる。ただ被害者を決して笑ってはいけない」
—笑いは右傾化する社会に対抗する武器になり得るだろうか。
「笑いは独裁者や全体主義への強力な武器だという言葉は素晴らしい。だが笑いだけでは状況を止められない。米大統領選では米国のコメディー番組が盛んにトランプ氏をジョークの種にした。トランプ氏は最もファシストに近い大統領だと僕は思うけど、それでも彼は大統領になった。ヒトラーが選出された時に似ている。叫んだり大げさな身振りをするヒトラーの演説を見て、多くの人がコメディーかオペラのようだと笑った。だが『それまでと違う誰か』を求める人々は彼に投票し、権力を与えた。映画は人を変えられないが議論のきっかけにはなれる。『帰ってきたヒトラー』を見た人たちが『自分たちの社会はこんなにひどいのか』と議論を始めた時はうれしかった」

 

考えることを放棄した人々

—極右の女性と移民の少年の交流を描いた映画を監督している。
「1990年代の終わりに旧東ドイツのポツダムの大学で学んだ時に、極右の思想を持つ10代、20代の女性たちにインタビューした。これが作品の骨組みになった。彼女たちは古い価値観と新しい価値観、疎外感と怒りの中にいて自分たちは被害者だと感じ、誰かに理解してほしい、自分たちが進む方向性を誰かに明快に示してほしい、と求めていた。『外国人排斥』など明確な答えを出す極右はそれに応えた。旧東ドイツ出身の親は、東西統一でそれまでの価値観が崩れ去り混乱している世代。旧西ドイツの親たちも『ナチスは駄目だ』とは言うが、今の政治に対策を示せない。極右は考えることを放棄した人たちを引き付け、大きくなっている」
(共同通信記者 舟越 美夏)


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