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自活の武器、ファッションへの関心 シンポジウム「ミシンが変えた女性の暮らし」

 吉見氏
 ゴードン先生のお話の3番目のポイントは、ミシンが入って来ることによって、日本の伝統的な価値に近代的な機械が入ってきたと思ったら、全然そうじゃない。世界中でシンガー社は同じような近代的ブルジョア家庭のモデルを売りつけていた。そういう形で日本の良妻賢母というのは、日本の伝統的価値というよりも近代的ブルジョア的な価値がグローバルに販売されていた。
 家庭電化製品とミシンは両方とも20世紀を通じて家庭に入ってきて、家庭が合理化、機械化するというプロセスを担っていた。違いはなんだろうかというと、女性たちはミシンを購入し、内職をし、自分で儲けていくための技術になっていく。自活をしていくツールになっていくという役割、これは家電にはないです。家電は消費という一元的なものですが、ミシンは女性たちが自分の生活を開いていく媒介になれる。

 坂東氏
 女性が自活する武器としてのミシン。これを活用されていたコシノさんの話をもう少しお聞きしたい。

 コシノ氏
 ミシンが母親を奪ったという実感を持って育ったと言っても過言ではないように、本当にミシンにかじりついていました。彼女の愛情を感じるのはどこかというと、勝負服というのでしょうか、ここという時に徹夜で私たちに洋服を作ってくれたのです。中学に入る時に、びっくりするくらい派手な洋服を作ってくれました。これを着せて入学式に出そうということになったのです。この効果を母は計算していまして、これで私をパシッと印象付けちゃったというエピソードがありました。ミシンを通じて母親のアイデアというか愛情を感じるのはそういう時でした。母との少ない接点みたいなものが感じられるのは、やはり女の子なので洋服なんです。洋服のデザインがいかに人の気持ちを動かすかということを感じて、われわれの世代ではデザインの大切さを感じたのですが、すべてはミシンがスタートです。

 坂東氏
 日本でも明治の終わりから大正にかけて主婦が誕生したのとあいまって「良妻賢母」は新しい国産の価値観でもあったのではないかと思うのですが。

 吉見氏
 その通りだと思います。明治国家体制の中で家父長的な秩序、ブルジョア的な良妻賢母思想が正当化され構築されていったと思います。先ほど休憩中にゴードン先生と話していて、今の時代でミシンに一番近いものを考えるとパソコンではないかと先生はおっしゃったのです。パソコンを手にすることにより、ウェブサイトのデザインとか、世界に向けて道が開かれる若者がいっぱいいる。

 坂東氏
 女性の一般的な能力としての縫い物と、プロフェッショナルのデザイナーあるいはファッションリーダーとしてのキャリアと、どこが一番大きな違いでしょうか。

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