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【芸能コラム】DVD発売に海外公開、長尺版の製作…。今なお広がり続ける作品の魅力 『この世界の片隅に』

(C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 昨年11月に公開されるや、口コミで評判を呼び、興行収入26億円を超す大ヒットとなったアニメーション映画『この世界の片隅に』。戦時中の広島を舞台に、平凡な女性すず(声:のん)の日常を通じて、戦時下を生きる人々の姿を情感豊かに描いた本作は、キネマ旬報ベスト・テンで日本映画第1位に輝くなど、2016年を代表する日本映画となった。

 現在は公開から間もなく1年を迎えようとしているが、その勢いは衰えることなく、今も広がり続けている。

 まずは、公開から10カ月を経て、待望のDVD/Blu-rayソフトが9月15日に発売。予告編など21分の映像特典とオーディオコメンタリー2種を収録した1枚組の通常版に加え、合計4時間を越える映像特典を収録した特典ディスクと100ページの特製ブックレットを同梱した特装限定版(Blu-rayのみ)の2種類がリリースされている。

 特装限定版の映像特典には、片渕須直監督が舞台となった広島・呉を訪ね歩き、詳細なリサーチを重ねる様子などが収められており、作品が誕生した背景や、そこに込められた思いを詳しく知ることができる。この他、映画本編自体はAmazon ビデオやU-NEXTなどのネット配信でも視聴が可能だ。

 その一方、封切り館である東京のテアトル新宿をはじめ、一部の映画館では今も上映が継続中。自宅で手軽に見るのもいいが、もともとは大きなスクリーン向けに製作された作品だけに、リピーターはもちろん、まだ映画館で見たことのない人は、ぜひ一度足を運ぶことをお薦めしたい。

 また、劇場公開の輪は、海外にも広がっている。既にタイ、メキシコ、イギリス、スペイン、台湾、フランス、イタリアなどで公開済み。国内同様に評価も高く、今年の6月には世界最大のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」で、長編部門審査員賞を受賞している。

 8月にはアメリカでも公開され、「ロサンゼルス地区での連続7日間の有料公開」というアカデミー賞の対象となる条件をクリアした。今後どうなるかは分からないが、来年3月に行われる第90回アカデミー賞で、長編アニメーション映画賞の候補になる可能性は十分にあるのではないだろうか。

 動きはこれだけに留まらない。9月14日には、片渕監督がtwitterで現在のバージョンよりも長い長尺版の製作に着手していることを公表。本作はもともと、製作費の都合で当初の構想から一部エピソードが省略されたいきさつがあるが、大ヒットにより、その部分を新しく追加したバージョンの製作が可能になったというわけだ。

 ただし、片渕監督は一連のツイートで、現行版を「一つの完成形」、長尺版は「また別なもう一つの映画として完成することになるでしょう」と語っており、決して現行版が不完全という意味でないことは心に留めておきたい。長尺版の完成には「それなりに長い時間をいただくことになります」との言葉もあることから、現行版をじっくり味わいつつ、長尺版の完成を気長に待ちたい。

 以上、簡単に整理しただけでも現時点でこれだけの動きがある。一過性のブームに終わらない高い支持を獲得した本作は、これからも末永く愛されていくことだろう。筆者もその1人として、今後の展開を楽しみに見守っていきたい。(井上健一)


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