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「風のたより~地域経済」地方都市の降雨災害への備え

写真はイメージ

 今年の夏も、全国で降雨災害が頻発しています。8月に各地を襲った記録的な豪雨、長雨による浸水被害や土砂災害は、記憶に新しいところです。

 とりわけ西日本は、このところ毎年のように豪雨に見舞われています。低地では浸水被害、傾斜地では土砂災害への懸念から、被害が予想される地域の住民には避難情報が繰り返し発せられるような状況です。線状降水帯という以前はあまり聞かれなかった専門用語も、すっかり市民権を得ています。

 7月末に東北に襲来した台風8号は、太平洋側から上陸するという珍しいルートをたどりました。気象庁の記録上、太平洋側から東北に台風が上陸したのは、2016年の台風10号に続いて2例目とのことです。台風が強い勢力のまま上陸した経験のない東北地方東岸では、激しい風雨に対する備えが整っていない可能性もあり、重大な被害を引き起こすことが懸念されました。

 地球温暖化の影響もあって、日本の南側に広がる太平洋の海水温が上昇しており、今後これまでとは比べものにならない強さの降雨によって災害が頻発することが懸念されています。

 もちろん地球温暖化への対策は不可欠ですが、たとえ温室効果ガスの排出量を削減目標に向け着実に減らすことができたとしても、気温や海水温の上昇は当面止まることはありません。日本に暮らす限り、激しい降雨災害への備えを怠るべきではないでしょう。

 そもそも日本人の暮らしや経済活動は、歴史的に洪水リスクの高い河口域やその周辺に広がる扇状地などで営まれてきました。そのため、狭い国土に暮らす先人たちは、まさに災害と復興の繰り返しの歴史を生きてきたと言っても過言ではないのです。そして、それはいまもあまり変わってはいません。

 例えば岡山県では、ハザードマップ上のリスクエリアに、人口の54%が居住し、58%が働いています。

 また、今年8月の豪雨に際して、広域で浸水被害が生じた九州・筑後川流域に広がる平野部は、上流から運ばれてきた土砂の堆積と海面後退などにより形成された低地で、河口から直線距離で30キロさかのぼっても海抜は10メートルに届かず、流域は絶えず浸水リスクにさらされています。徳島県では、吉野川の河口に広がった徳島市の市街地のほぼ全域が、ハザードマップ上では浸水リスクエリアとされています。

 西日本には、真砂土で形成された傾斜地が各地で散見されます。真砂土は、花こう岩の風化によって生じた土砂のことで、降雨によって崩壊しやすいとされます。2014年に広島市で複数の土砂災害が発生し、多くの人命が失われたのも、真砂土が広がる傾斜地に造成された住宅地であったことが知られています。

 増え続ける自然災害とは裏腹に、人口減少が進むわが国においては、治水工事などの公共事業によって、すべての暮らしの場を守ることは難しくなりつつあります。今後も重大な降雨災害が予想されるなか、少しでも安全なエリアに暮らし、経済活動を集約したうえで、インフラ投資をそのエリアに集中していくのが現実的な選択肢となるでしょう。

(日本総合研究所 調査部上席主任研究員 藤波 匠)

 

(KyodoWeekly9月13日号から転載)

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