経済
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司令塔が機能しない―いつもの「承知していない」

写真はイメージ

 東京五輪がついに開催となったが、その間に明らかになったのは、この祭典の指揮を執るべき司令塔の機能不全だ。

 五輪組織委員会のひどさは度を超している。あらかじめ決められたこと以外は考えられず、状況の変化に応じて柔軟に対処する力を持っていないようだ。

 なぜ、対面の歓迎会を開くのか、なぜ、開会式の楽曲制作者の問題を把握できていなかったのか。

 一方で、スポンサーや外国からの来客には甘い。なぜ、観戦する小学生の持参する飲料がスポンサー企業のものである必要があるのか。なぜ、プレーブックの外出ルールについて勝手な解釈で行動制限を緩和しようとしたのか。

 スタッフの問題も「知らなかった」と弁明するほど、組織委員会は事前のチェック機能も働かないらしい。誰かの推薦があったとしても、少し手間をかければ見逃すような問題ではないだろう。

 これと似た構図が首相官邸でも起きている。それが酒類販売に関する騒動だ。関係閣僚会議で事務方から説明された金融機関への要請について、その会議の議長である菅義偉首相は「承知していない」としらを切った。担当大臣が暴走したことにしたいようだ。首相は上の空で「聞いていなかった」のが真相だろう。

 そのうかつさは、この首相ならありそうだ。記者会見の質疑でも質問を聞いて答えているとは思えないからだ。「承知していない」のはいつものことなのだろう。

 ただ、議論にならなかったとしても、その場合は説明案が了承されたというのが、日本の会議の慣例だから、出席者は承認を与えたことになる。

 深刻なのは、「営業の自由」という経済社会の基本原理を犯すような措置が、事務方から提案されても、その重大性に気がつかない政治家たちがこの国を仕切っていることである。

 そして、事務方の起案だとすれば、これに関わった官僚たちもチェックできなかったことになる。行政のプロたちがまともな判断力を失っている。ボトムアップで慎重に練り上げられた政策立案を軽視し、官邸主導で「何か対策を」とせっついて出てくる思いつきのようなものに頼っているから、国税庁の酒類販売事業者への通達のように、言われたままに官僚たちも動いている。

 批判に対して首相以下閣僚は知らん顔という態度では、官邸主導でどのような情報発信があっても、誰も信じないだろう。

 菅首相は、問題を引き起こした西村康稔・経済再生担当相について「感染防止のために朝から夜まで頭がいっぱいで、いろんな対策を練ってきている」と弁護した。

 しかし、この言葉は批判がやまず、支持率が下がり続けた首相が自らを慰めるものだろう。頑張っているのだから、大目に見てほしいと哀願しているようだ。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly8月2日号から転載)

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