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責任はだれがとるのか―五輪のステークホルダー

写真はイメージ

 酒類提供問題についてステークホルダー(利害関係者)の意見が反映されるという、丸川珠代五輪相の発言が、五輪開催がどのような利害関係から推進されているかを、あからさまに示した。

 ステークホルダーという言葉は企業統治などに関連してよく耳にするようになったが、その意味は、組織の存続を支えるような多様なグループのことである。企業では株主だけでなく、消費者(顧客)、従業員、債権者、取引先、地域社会、行政機関などをすべて含んでいる。

 つまり、株主のようにカネを出した利害関係者だけではないから、スポンサーにだけ配慮して開催時のルールを決めるのは、ステークホルダー全体を見ていないことになる。この態度は、企業でも株主本位が強く打ち出されている現状を反映している。 本来の意味から考えれば、組織委員会は、政府や東京都、そしてスポンサー企業などの資金の出し手だけではなく、運営に関わる多数の人たち、競技に参加する選手だけではなく、この巨大なスポーツイベントの顧客となる多くの観客(国民)についても、同等に考慮に入れて、総合的に判断をする必要がある。

 利害関係がある多様なグループへの影響を考慮すれば、感染拡大に対する国民の幅広い懸念などに向き合った対応をしなければならない。

 しかし、組織委員会は、開催を前提に来日するVIPへの「おもてなし」や観戦チケット購入済みの人たちしか目に入らない。感染リスクを冒して観戦に向かう観客を止める必要性は、万一感染が拡大した時の責任の取り方から考えるべきだろう。主催者はどう責任をとるのか。責任を引き受けられないのであれば、高リスクの機会を提供すべきではない。

 もっとも、菅義偉首相は、先日の党首討論において、いきなり「世界のさまざまな国でロックダウンを行ってきたが、外出禁止などの厳しい措置を行った国々でも、結果として(感染拡大を)収束できなかった」と断言した。

 これまでの緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置によってとられてきた「自粛措置」は感染対策では有効性が乏しいとあっさりと認めた。もちろん、私権の制限に及ぶほどの無理を国民に強いてきた責任者として、これまでの政策選択の誤りを認めたわけではない。

 菅首相はワクチン接種に期待している。それが唯一の手段であれば、五輪開催は返上して全力を挙げて接種促進に取り組むのが筋だ。

 しかし、ワクチン供給の制約から職域接種も一時休止に追い込まれるなど暗雲が漂う。一方、開催地東京の感染者数は確実に増加を記録する危機的な状況にある。いずれワクチンも万能ではないと言い出す気なのだろうか。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly7月5日号から転載)

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