経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

「本の森」経済安全保障リスク

平井 宏治 著

●248ページ

●育鵬社(1760円)

 

ノー天気だった国民

 

 外国資本による東芝の買収問題、外国人に対する土地所有の規制、テレビ会社の外資保有割合の問題…。

 最近、安全保障との関連で経済が話題になることが目立ってきた。これまで多くの日本の国民や企業経営者はそういうことにはあまり関心を払ってこなかった。ノー天気だったのだ。

 本書では経済と安全保障とを関連づけて分かりやすく、しかも具体例を挙げて論じており、時宜にかなった本だ。一般の人だけではなく、企業経営者にもぜひ読んでほしい1冊である。

 著者は約30年間も企業買収に従事してきた。その中で中国が手段を選ばないで、軍事に転用できる先端技術を自国に転移する事例を目の当たりにしてきた。例えばある中国人がやってきてこう言った。「兵器に転用できる技術を持った電機メーカーはないか?」

 約20年前に中国の軍人が書いた「超限戦 21世紀の『新しい戦争』」という本が共同通信社から出版された。現在は「角川新書」として書店に並んでいるが、軍事以外のあらゆるものを戦争の手段として活用すべきだと主張している。貿易、ハイテク技術、金融といった分野だ。 筆者はそのシナリオ通りに中国は着々と実行してきたと書く。これらは軍事とは直接関係ないと思ってか、日本の企業は高度な技術を中国に移転してきた。

 例えば半導体やセンサー技術、電池の電極技術など挙げればきりがない。中国には人民解放軍系の企業がたくさんある。こういう企業と取引をしていると、危機感を募らせている米国から制裁を受けかねないことを知っておくべきだろう。つまり米国ビジネスができなくなる恐れがある。

 

「大丈夫なのか」

 

 中国には、ほかの国にはない事業リスクになる法律がたくさんある。

 国防動員法と国家情報法は比較的知られている。前者は有事と判断されれば、中国にある外国資本の工場や物資を自由に接収できるものだ。

 後者は中国人にスパイ活動をも義務づけるもので、日本の企業情報もその対象になりかねない。

 このほか、国家安全法や輸出管理法というのもあって、利益目当てに中国に進出すると、どのような落とし穴にはまるのか知れたものではない。

 ここ10年、中国の事業リスクは様変わりしており日本企業は優れた技術を軍事に転用されないようにしないといけない、と著者は警鐘を鳴らしている。

 最近も日本の有名なロボットメーカーが工場の増設に乗り出した。このほか、大手の自動車メーカーが電気自動車の工場を造ると報じられるなど、中国に進出する企業は後を絶たない。

 思わず「大丈夫なのか」と、つぶやいてしまう。   

(北風)

 

(KyodoWeekly6月7日号から転載)

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