経済
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学術会議に知恵拝借を―どうする、国の借金返済

 3月初め、イギリス政府は、およそ半世紀ぶりに法人税率を2023年4月に19%から25%に引き上げる方針を表明した。米国のバイデン政権でも法人税率の引き上げを視野に入れた財政政策を構想しているという。

 翻って日本では、コロナ対策のために巨額の国債発行に依存した予算が間もなく成立する見込みとなっている。コロナ対策として財政面から補助が必要であることに異論はない。とりわけ低所得層の生活保障や中小事業者の救済などの資金、そして医療現場に対する支援は吝(お)しむべきではない。

 ただ、将来に残る巨額の国の借金をどのように返済していくのかの議論に乏しいことは、日本の政治が近視眼的な落とし穴に陥っていることを示している。経済成長による税の増収を期待するのは夢物語だ。

 東日本大震災の発生から10年が経過しても復興は、いまだ道半ばであり、とりわけ原発事故の影響は深刻で先が見えない。それでも、かなりの金額の復興予算を投じることができた理由の一つは、復興特別税による財源が確保されたからである。所得税、住民税、法人税に対する上乗せ課税による財源措置は、日本学術会議からの提言をきっかけに実現したという。菅義偉首相は役に立っていないと決めつける学術会議だが、これ一つとっても首相の認識不足は明白だ。

 税の引き上げには政治的な抵抗が大きい。実際に復興特別税でも、法人税の上乗せは3年間だけで、所得税の25年間とは著しくバランスを欠いている。この不均衡をもたらしたのは、法人税率の引き下げが景気対策、経済成長を促す投資促進に効果的だと財界などが強く主張したからであろう。

 しかし、25年以上にわたって法人税の引き下げを続けてきたにもかかわらず、経済状況の改善につながるような積極的な投資は生まれていない。減税が投資につながるという財界の主張を裏付ける事実は何もない。減税は株主配当を増加させ、高額所得者を優遇するという、大企業や所得者の利害に沿った結果をもたらしただけだ。

 税率がどうであれ、自らの事業活動の将来のために投資する意欲のない企業に減税措置を続けるのは無駄であり、やめるべきだ。増税すれば企業は海外に拠点を移すと心配する人たちもいる。しかし、コロナ感染症は世界中の国々で多額の財政負担を強いている。逃げ場はない。

 世界は、個人も法人も国の財政再建に応分の負担をすべきだとの合意に向かって方向転換しつつある。震災の教訓も生かし、将来にわたるビジョンを持ち、世界の流れに乗り遅れないことが求められている。

 身内や側近が原因の火の粉を払うのに必死でビジョンを考える余裕もない菅首相には、学術会議に知恵を借りることを勧めたい。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly3月22日号から転載)

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