経済
政治・経済・国際の解説・分析記事

「長男は別人格」―免れない首相の政治責任

 森友学園問題について国会で追求を受けた安倍晋三首相(当時)は、2017年2月17日の衆議院予算委で「私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」と答弁した。

 政治的に高い地位にある者の政治的影響力を背景に、その家族などが行政の判断をゆがめ、利益を得るような行為を行った場合、その行為者だけでなく、政治家本人にも政治的・道義的責任があることを、この答弁は明らかにしている。

 もっとも、この答弁のために財務省内で記録の改ざんなどが行われ、責任を回避させるための忖度(そんたく)があり、安倍首相は辞職することはなかった。権力の腐敗を如実に示した事件だった。

 翻って、菅義偉首相の長男による総務省官僚に対する接待疑惑では、菅首相は「長男は別人格」と言い切って自らの安全を図ろうとしている。森友問題で記者などの追求の矢面に立った官房長官時代の経験からみて、連座して責任を問われるのは避けたいという意識が「別人格」という言葉に込められている。

 しかし、総務省高官が菅首相長男を特別待遇していたことは明白だろう。そうでなければ、総務省の高官は、関係業界先から接待漬けになっており、ほかにも国家公務員倫理規程に違反する行為があったことになる。それほど大規模な腐敗が進んでいたのであれば、総理大臣としての責任が問われる。

 特別待遇であったとすれば、首相の政治的影響力が規定違反の背景にあったことになる。「別人格」であっても、政治的・道義的責任を逃れることはできない。4年前の安倍首相答弁に従えば、「総理大臣も国会議員も辞める」に値する事案だろう。どちらにしても、首相の政治的責任は免れない。

 しかも、東北新社が接待したなかの1人である内閣広報官(3月1日付で辞職)は、以前は総務省情報流通行政局長という要職を2017年から2年間務めていた。このポストは総合映像プロダクションを自称する東北新社の展開する事業について、とりわけBS・CS放送関連事業において許認可権を持っている。接待を行う側に何の下心もなかったと考えるのは、かなり難しい。

 もともと菅首相長男の入社に、総務省との重要なパイプ役を期待していたのではないか。長男は東北新社に勤務し、総務省から衛星放送の認可を受けている子会社の役員も務めている。利権と腐敗の構造が疑われるのは当然だ。

 この疑惑を解明せずに、総務省高官などに対する倫理法違反の処分だけで逃げ切るのが、菅首相の描くシナリオだろう。首相に忠実な総務省に期待するのは無理かもしれないが、国民のために働く本務にこそ忠実な疑惑解明を願いたい。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly3月8日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ