経済
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常識破りの経済運営―歴史的成果をあげるかも?

 新年の通常国会で議論される2021年度予算案は、20年度第3次補正予算と合わせて15カ月予算となった。新型コロナ感染症の影響で税収減が見込まれるなかで、コロナ対策などに5兆円の予備費を積んだこともあって多額の国債発行に依存した前例のない歳出規模となった。

 膨張の抑制がきかない理由の一つは当面の感染症対策だが、そうした歳出増が見込まれるとき、他の予算の削減努力によって財政を少しでもバランスさせるための努力はどのくらいなされたのだろうか。

 防衛費の増加は、そうした政府の努力の欠如を典型的に示している。イージス・アショアの失敗に懲りず代替策によってミサイル防衛体制を強化することは21年度に必ず着手すべきものなのだろうか。このほかにも、優先順位を考えて先送りすべきものはあるだろう。

 経済状態が悪いときには財政支出による需要創出が有力な手段だと考えられてきた。

 しかし、そうした財政膨張は四半世紀を超える長期不況にはほとんど効果はなかった。財政刺激による経済回復が税収増につながり、事後的に財政の借金は返済できるというケインズが描いたシナリオはもはや過去のものになっている。

 だから、むやみに予算増加を是認すべきではない。しかし、今回の予算案は、財政規律を維持しようというタガがはずれてしまった。いったい積み上がる国の債務はどうやって返済するつもりなのか。見境のない借金依存が望ましくないのは国でも家計でも変わりない。

 国債の負担が長く日本経済を苦しめると予想されるなかで、コロナ禍では新しい政策運営の可能性が実験されている。

 それが、「Go To キャンペーン」を典型に、経済回復の重要な手段として消費拡大が重要だという認識に基づく施策である。この暗黙のうちに広がった認識は、投資を刺激することを重視してきた考え方とは真逆のものである。長期不況下で企業の投資行動は緩慢で、経済回復の主役の座を自ら放棄している。だからこそ、旅行や飲食など個人の消費支出に期待した施策がクローズアップされた。今のところ日本政府の施策の波及効果には限界がある。

 しかし、消費が重要であれば、雇用調整は消費拡大にマイナスであるから、企業に対して雇用条件の積極的改善を求めることになる。コロナ禍で営業自粛を求められた小規模事業者や雇用を失った勤労者の所得も補償しなければならない。企業投資から家計消費に焦点を移した施策への転換がポイントになる。

 コロナ禍が終息してからのことだが、この路線で経済回復が実現されれば、菅義偉内閣は、経済政策の常識を破る、歴史的な成果をあげたと称賛されることになるかもしれない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly1月11日号から転載)

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