経済
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責任回避の前例打破を―「勝負の3週間」を経て

 「勝負の3週間」が終わった。菅義偉首相は、この期間にどんな勝負を仕掛けたのだろうか。国民に行動の自粛を求めるだけで、最終局面でようやく「Go To トラベル」の一時中断を表明した。

 感染症対策の専門家会議を分科会に格下げしたのは安倍政権時代だが、専門家の発信する意見が政策決定に強い影響を与えたことが、政権の意に沿わなかったためだろう。

 感染症の専門家の意見も参考にしながらも、政策決定の最終的権限は政府にあるとしたことは、考え方として理解できる。ただ、その場合には、政府が政策決定に伴う責任も全面的に負うのでなければならない。

 専門家の悲鳴のような警告を聞きながらも、菅首相はGo Toなどの“完全な中断”もせず、むしろその延長などが首相周辺では議論されていた。それは感染症との戦いが長期戦になると感じているから、経済対策の延長が問題になるのだろう。長期戦ならじっくり構えて、感染対策との両立を模索すべきであり、状況によっては柔軟なかじ取りが必要になる。そうでなければ、特定業界の利益に奉仕するだけになる。

 他方で、感染症対策として国民に行動自粛を求めるだけでは無策という以外にはない。医療崩壊が目前に迫っているなかで、医療者へ考え得る支援策を一つ一つ実行することは、何よりも優先すべきであった。

 そして、「3密」を回避して感染拡大を防止するための営業自粛を求めるのであれば、事業継続を脅かされ、あるいは雇用機会を失う人たちに直接届く給付や補助などの経済支援が必要になる。

 Go Toなどの経済対策は、観光地の中小事業者などには恩恵をもたらすだろう。しかし、これを利用して旅行し、飲食できるのは、時間的にも経済的にも余裕のある人たちに偏っている。これでは、感染拡大によって経済的困窮に直面している人たちには届かない。症状と治療が対応していない。

 このずれは、政府が国民生活の実態に対する認識の浅さに由来する。支持率の急落によって方針転換を表明したとはいえ、認識を改めたとは受け止めにくく、首相の説明は極力責任回避を図る意図が見える。

 何かをやれば責任が伴うことは自覚しているから、何もしないで問題が過ぎ去ることを期待しているのが菅首相の基本的なスタンスである。

 問題を追及されても「答弁を差し控える」と責任ある説明をせず、他の問題が発生して追求の熱が冷めることなどを待つ。こうして責任回避を続けてきたのが自民党政権である。専門家の意見も聞くことを嫌い、責任回避を続けてきた政治家のなかに、あしき前例を打破し、正面から問題に取り組む気概を持つものはいないのか。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly12月21日号から転載)

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