経済
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任命拒否は明確な法令違反―学術会議問題の本質

 学術会議会員の任命拒否問題では法令解釈が問われている。法令が多義的なことはありうる。

 しかし、法令の文言にあいまいさが残るからこそ、その解釈を巡り立法府の質疑であいまいさを払拭(ふっしょく)し、一義的な解釈ができるような了解が成立して法令は制定される。

 そこには法令の文言以上の制定の趣旨が盛り込まれている。

 この点を踏まえて考えると、政府側が明確に「拒否することはない」と立法府で明言したことは変更できない。

 もし、任命拒否もできるとの考えに変えるのであれば、法改正の手続きを経なければならず、内閣法制局がどのような解釈を示しても、それによって法制定の趣旨を変更することはできない。

 米大統領選挙で「敗北」を認めず、一方的に疑惑をあおり立てているトランプ大統領ですら、求めているのは、法に基づいた票の数え直しや、違法な選挙妨害があったかどうかについての司法の判断である。

 法解釈をねじ曲げるほどの暴挙はしていない。もちろん、フェイクニュースを量産する目に余る行いは許せることではない。

 これに対して菅義偉首相は、学術会議には民間人が少ないとか、男女比に問題があるとか、地方大学の会員が少ないと説明にならない説明をしている。これらも事実に基づかず、フェイクニュースに近い情報操作により世論誘導を図るものである。 学術会議法では「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考」することを求めており、これ以外の推薦基準はない。地方・民間・女性などの比率を勘案する基準を持ち出して、任命拒否することは明確な法令違反となる。

 法の制定の趣旨を無視し、恣意(しい)的に解釈を変更することは、法に基づく行政権限の行使という原則を逸脱している。行政府の長としては重大な違法行為であり、法の順守という点では、トランプ氏以下である。

 事前の調整が2017年に行われていたとの説明も、事実ではないと反論があり、この説明もフェイクの疑いがある。前例を持ち出して合法性を言いつのるのは、「前例打破」の表看板に自ら泥を塗る行為になる。

 「過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」という。いまだ高い支持率を維持しているのだから、行政の過誤を認め、問題の収束を図るべきだ。

 もともと、具体的な排除理由も十分に理解せずに、上申文書に安易に承認を与えただけなのだろう。

 後付けの理由は、支離滅裂で一貫性がないが、それも側近の助言に飛びついたからだろう。 だから、次々と説明が変化していく。首相の言動には、問題の本質を論理だって考え、これを分かりやすく表現する能力も努力も見いだせない。これを補佐すべき首相の周りにも知恵のある人はいないらしい。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly11月23日号から転載)

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